※本記事にはプロモーションが含まれています。
こんにちは、ジェネレーションBのTAKUです。
2021年、チャーリー・ワッツの訃報を聞いたとき、私は「ストーンズの心臓が止まってしまった」と本気で思いました。
60歳を目前にした今でも、あの日の喪失感は忘れられません。
しかし、スティーブ・ジョーダンが叩き出す重くタイトなビートを聴いたとき、バンドがただ延命したのではなく、新しい血を入れて「現在進行形のロックバンド」として転がり続けている事実に震えました。
ザ・ローリング・ストーンズでチャーリー・ワッツの後を継いだドラマーとして、スティーブ・ジョーダンを知った方は多いでしょう。
一方で、ジョン・メイヤー・トリオやキース・リチャーズのソロ作品を先に聴き、「この重くて気持ちのいいドラムは誰が叩いているんだ?」と気になった方もいるかもしれません。
スティーブ・ジョーダンのドラムは、速いフレーズや派手なソロで圧倒するタイプではありません。
むしろ音数を絞り、歌やギターが最も生きる場所に、必要な一打だけを置くドラマーです。
スティーブ・ジョーダンの本当のすごさは、ドラムを目立たせながら、決して楽曲の邪魔をしないことにあります。
この記事では、スティーブ・ジョーダンの経歴、ドラムスタイル、使用機材、ストーンズ加入までの流れ、チャーリー・ワッツとの違い、そして名演を味わえる代表作まで整理します。
- スティーブ・ジョーダンの経歴と代表的な活動
- 歌を支えるドラムスタイルとグルーヴの特徴
- チャーリー・ワッツとの違いとストーンズでの役割
- 使用機材と最初に聴くべき代表作
1. スティーブ・ジョーダンの何がすごい?

スティーブ・ジョーダンを一言で表すなら、「歌を支えるグルーヴ」の最高峰にいるドラマーです。
グルーヴとは、簡単に言えば、リズムを聴いたときに体が自然に動き出す心地よさのことです。
正確なテンポで叩くだけなら、優れたドラマーは世界中にいます。
しかしジョーダンは、同じテンポの中でも一打ごとの重さ、音の長さ、余白、音色を変え、曲全体の表情を作ります。
大きな特徴は、必要以上に叩かないことです。
フィルインと呼ばれる曲の区切りの装飾も、見せ場を作るためではなく、歌やギターを次の場面へ運ぶために入れます。
そのため、ドラムだけを追いかけると驚くほどシンプルに聞こえる曲があります。
ところが、ドラムが消えた場面を想像すると、曲の重心が一気に失われる。
この「簡単そうに聞こえるのに、同じようには鳴らせない」という感覚こそ、スティーブ・ジョーダンのドラムの深さです。
スティーブ・ジョーダンの評価を決めるポイント
私はボーカリストとしてバンドで歌っていますが、歌い手にとってドラムとの相性は想像以上に重要です。
ドラムが前へ急ぎすぎれば、歌は追い立てられます。
逆に、後ろへ下がりすぎれば、声をどこへ置けばいいのか分からなくなる。
ジョーダンのドラムには、ボーカルが言葉を置ける空間があります。
しかも、その空間が空白には聞こえません。
ハイハットの低い響き、スネアの太い一撃、バスドラムの衝撃が、歌の下に見えない床を作っているからです。
◆TAKUのワンポイント
歌が力まず前へ出てくる曲ほど、後ろでジョーダンが絶妙な隙間を作っています。
彼はドラマーとしてだけでなく、プロデューサーとしても作品全体をまとめてきました。
どの楽器を前へ出し、どの音域を空け、どこで演奏を引くべきかを理解しています。
つまり、スティーブ・ジョーダンのドラムは、単独で完成する演奏ではありません。
歌、ベース、ギター、鍵盤を含めたアンサンブル全体の中で完成するドラムなのです。
2. スティーブ・ジョーダンの経歴
現在のスティーブ・ジョーダンだけを見ると、ストーンズを支えるロックドラマーという印象が強いかもしれません。
しかし、その音楽的な土台には、ジャズ、R&B、ソウル、ファンク、ブルース、テレビ番組のハウスバンド、スタジオ録音という幅広い経験があります。
長い経歴の中でさまざまな音楽を吸収しながら、最終的に「曲のために叩く」という哲学へたどり着いたドラマーです。
2-1. ブロンクスからプロの世界へ
スティーブ・ジョーダンは、1957年1月14日にニューヨーク市ブロンクスで生まれました。
建築家の父と音楽を愛する母のもとで育ち、家庭にはジャズを中心とした多くのレコードがありました。
8歳のとき、祖母からスネアドラムを贈られたことが、打楽器奏者としての出発点になります。
父からは、アート・ブレイキーの「ブルース・マーチ」のドラムソロを演奏できるようになれば、幅広い音楽を叩けるようになるという助言を受けました。
アート・ブレイキーは、力強いスウィングとメロディを感じさせるドラミングで知られるジャズドラマーです。
ジョーダンは幼い時期から、単なるリズムの反復ではなく、ドラムで音楽の流れを作る感覚を学んでいたのでしょう。
もう一つ興味深いのが、右利きでありながら、初期の指導環境の影響で左利き用のセッティングから学び始めたという逸話もあることです。
この経験は、左右の手を均等に扱う感覚や、一般的なドラマーとは異なる体の使い方につながったと考えられます。
その後、ニューヨークのハイスクール・オブ・ミュージック・アンド・アートへ進学し、1974年に卒業します。
在学中には、若い音楽家を育成するジャズ・インタラクションズというプログラムに参加しました。
そこで、モータウンなどの録音でも活躍したドラマー、フレディ・ウェイツから個人的な指導を受けています。
ウェイツから学んだのは演奏技術だけではありません。
プロとしての振る舞い方や音楽に向き合う姿勢も含め、ジョーダンの土台を作る重要な師となりました。
10代のうちから才能を認められ、スティーヴィー・ワンダーのバンド、ワンダーラブの名誉メンバーとして迎えられます。
1976年には、ニューヨークの腕利きミュージシャンが集まったスタッフでドラマーの代役を担当し、ジョー・コッカーのアメリカ・ツアーにも参加しました。
まだ20歳前後です。
ジャズの教育を受けた若者が、ソウル、R&B、ロックの第一線へ一気に進んでいったことになります。
ジョーダンの原点にいるドラマー
特に重要なのが、スタックス・レコードを支えたアル・ジャクソン・Jr.です。
音数を抑えながら曲を強く前へ運ぶ哲学は、後のジョーダンに大きな影響を与えました。
アル・ジャクソン・Jr.が支えたソウルの魅力は、オーティス・レディングの代表曲解説でも紹介しています。

2-2. SNLとブルース・ブラザーズ時代
1970年代後半、ジョーダンはアメリカのテレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のハウスバンドに参加します。
毎回異なる出演者や楽曲に対応するハウスバンドでは、初めて渡された曲でも瞬時に構造を理解し、限られた時間で演奏を完成させなければなりません。
ここで鍛えられた対応力は、後のセッション・ドラマー、プロデューサーとしての仕事に直結したはずです。
番組から生まれたブルース・ブラザーズにも、スティーブ・“ゲットドワ”・ジョーダンの名でオリジナルメンバーとして参加しました。
1978年のライブ・アルバム『Briefcase Full of Blues』では、ブルースやソウルをショーとして成立させる強力なバックビートを聴けます。
スティーブ・ジョーダンの強力なバックビートが炸裂するライブ盤
Briefcase Full Of Blues
ブルース・ブラザーズ1978年の全米No.1ライブ・アルバム。若き日のジョーダンがショーを丸ごと支える一打を聴けます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
バックビートとは、主に2拍目と4拍目をスネアで強調するロックやR&Bの基本的なリズムです。
ただ強く叩くだけでは、ブルース・ブラザーズのような大人数のバンドは重くなりすぎます。
ジョーダンは、ホーン、ボーカル、ギター、鍵盤が入り乱れる中でも、曲の輪郭が崩れない位置にスネアを打ち込んでいました。
1980年の映画版には出演していませんが、初期ブルース・ブラザーズの音楽的な勢いを作った重要人物であることは間違いありません。
同時期には、ハイラム・ブロック、ウィル・リー、クリフォード・カーターと24丁目バンドを結成しました。
1979年から1981年にかけて3枚のアルバムを発表し、日本ではフュージョンやクロスオーバーを好むリスナーから高い支持を得ます。
1979年には、郷ひろみのアルバム『スーパー・ドライブ』にも24丁目バンドのメンバーとして参加しました。
日本のポップスを深く掘っている方にとっては、ストーンズよりはるか以前から、ジョーダンのドラムを耳にしていた可能性があります。
1980年代には、デヴィッド・レターマンの深夜番組でもハウスバンドを務めました。
さらに、スティーヴ・カーンのアイウィットネスでは、アンソニー・ジャクソン、マノロ・バドレーナらと複雑なジャズ・ロックにも取り組んでいます。
ブルース・ブラザーズの分厚いリズムと、アイウィットネスの複雑な演奏。
両方を高い水準で成立させられる技術がありながら、後年はあえてシンプルな一打を選ぶ。
ここにスティーブ・ジョーダンの奥深さがあります。
3. ストーンズ加入までの軌跡
スティーブ・ジョーダンがストーンズに加わったのは、突然の出来事ではありません。
その背景には、1980年代から続くキース・リチャーズとの深い信頼関係がありました。
チャーリー・ワッツの代わりに有名なドラマーを連れてきたという単純な話ではなく、ストーンズの歴史とキースの呼吸を理解する人物が選ばれたのです。
3-1. キース・リチャーズとの信頼

スティーブ・ジョーダンとストーンズの直接的な接点は、1986年のアルバム『Dirty Work』にパーカッションで参加したことにさかのぼります。
その後、キース・リチャーズがプロデュースしたアレサ・フランクリンの「Jumpin’ Jack Flash」の録音にドラマーとして参加しました。
さらに、チャック・ベリーの映画『Hail! Hail! Rock ‘n’ Roll』への参加をジョーダン自身がキースへ強く働きかけます。
当初、キースはチャーリー・ワッツの起用を希望していましたが、実現が難しくなり、ジョーダンがドラムを担当することになりました。
チャック・ベリーの音楽は、一見すると単純なロックンロールに聞こえます。
しかし、ギターがリズムを大きく揺らし、歌も一定の位置には収まりません。
その中で曲を崩さず、勢いも失わせないドラマーには、譜面の正確さとは別の音楽的な判断力が必要です。
ジョーダンの演奏力と理解力に確信を持ったキースは、自身のバンド、エクスペンシヴ・ワイノーズの中心人物として彼を迎えました。
ジョーダンはドラマーだけでなく、共同プロデューサー、ソングライターとしてもキースを支えます。
『Talk Is Cheap』『Main Offender』『Crosseyed Heart』の3作品では、キースのギターが最も自然に転がるリズムを作りました。
キースとジョーダンが共作した「Almost Hear You Sigh」は、後にストーンズの『Steel Wheels』へ収録されています。
つまり、ジョーダンは2021年に突然ストーンズの世界へ入ってきた外部のドラマーではありません。
何十年も前から、キースの音楽の内部にいた人物なのです。
キースのギターは、ドラムの拍にきっちり合わせるというより、リフそのものが呼吸しながら前後に揺れます。
その独特な奏法については、キース・リチャーズのテレキャスター奏法解説でも詳しく紹介しています。

ジョーダンは、その揺れを消してしまうのではなく、倒れない範囲で支える感覚を長年かけて身につけました。
2021年、チャーリー・ワッツが健康上の理由でツアーから離れることになった際、ワッツ本人の推薦を受けてジョーダンが代役を務めます。
同年8月にワッツが亡くなったことで、ジョーダンは想像を絶する重圧の中、ストーンズのリズムを引き継ぐことになりました。
ストーンズの活動状況について
本記事は2026年7月執筆時点の情報をもとにしています。
ジョーダンの参加作品、今後のツアー、出演メンバーなどは変更される可能性があります。
正確な情報は、ザ・ローリング・ストーンズの公式サイトやレコード会社の公式発表をご確認ください。
3-2. チャーリー・ワッツとの違い

チャーリー・ワッツとスティーブ・ジョーダンを比較するとき、大切なのは優劣を決めないことです。
二人は音楽的な出発点も、ドラムの役割に対する考え方も異なります。
チャーリーはジャズを深く愛し、その軽やかなスウィング感をロックンロールへ持ち込みました。
スネアを叩く瞬間にハイハットを叩く手を抜く独特な動きもあり、ストーンズに他のバンドでは再現できない隙間と揺れを与えています。
バックビートをわずかに後ろへ置く、いわゆるレイドバックも特徴です。
レイドバックとは、テンポを遅くするのではなく、拍の中心より少し後ろに音を置いて、ゆったりした感覚を生む奏法です。
チャーリーの時代は、キースのギターがバンドの進む速度を決め、ドラムがその揺れに反応しているように聞こえる瞬間が多くありました。
一方のジョーダンは、R&B、ファンク、ソウルの影響が強く、ドラム自体が太い柱となってテンポを支えます。
ビートの中心にスネアを打ち込み、キースやミック・ジャガーがその上で自由に動ける床を作るスタイルです。
| 比較点 | チャーリー・ワッツ | スティーブ・ジョーダン |
|---|---|---|
| 主なルーツ | ジャズ、スウィング | R&B、ソウル、ファンク |
| タイム感 | 拍の後ろで揺らす | 拍の中心を強く支える |
| スネア | 軽やかで乾いた響き | 太く鋭いリムショット |
| バンドでの役割 | キースの揺れに反応する | バンド全体の土台を固定する |
| 全体の印象 | ルーズで有機的 | タイトで筋肉質 |
ジョーダン加入後のストーンズを聴いて、「少しタイトになりすぎた」と感じるファンがいるのも理解できます。
チャーリーの揺れは、ストーンズの個性そのものだったからです。
ただし、ジョーダンはチャーリーのコピーをしようとはしていません。
曲によってスティックの持ち方(両手を同じ形で握るマッチド・グリップと、左手だけ下から支えるトラディショナル・グリップ)を使い分け、チャーリーの動きや音の位置に敬意を払いながら、自分自身の太いグルーヴを持ち込んでいます。
模倣ではなく、敬意を持った継承。
私はここを最も高く評価しています。
チャーリーとまったく同じように叩けば、どうしても偽物に聞こえてしまいます。
かといって、ストーンズらしい呼吸を無視して自分のスタイルだけを押し通せば、バンドの歴史が切れてしまう。
ジョーダンは、その難しい中間地点に立っています。
過去のストーンズのライブ映像でチャーリーの動きを確認したい方は、ローリング・ストーンズのおすすめライブDVD解説も参考にしてください。

4. ドラムスタイルと使用機材
スティーブ・ジョーダンの音は、演奏技術だけで作られているわけではありません。
スネアの張り方、ミュートの方法、ハイハットの大きさ、スティックの長さ、バスドラムの緩め方まで、すべてが楽曲の中で必要な音を出すために選ばれています。
機材をまねるだけで同じ演奏にはなりませんが、音作りの意図を知ると、ジョーダンのドラムがなぜ独特なのかが見えてきます。
4-1. ポケットとグリップの哲学

スティーブ・ジョーダンのドラムを語るとき、頻繁に使われる言葉が「ポケット」です。
ポケットとは、バンド全体が最も気持ちよく演奏できるリズムの位置を指します。
機械のように拍の中心へ音を並べるだけでは、ポケットは生まれません。
ベースの音がどこで膨らむのか、ギターのリフがどこで息を吸うのか、ボーカルがどの言葉を強調するのかを感じながら、ドラムの位置を微調整する必要があります。
ジョーダン自身の哲学を象徴するのが、二つの四分音符の間には広大な海があるという考え方です。
二つの音の間は、何もない空間ではありません。
前の一打がどのように消え、次の一打へどれだけ期待を持たせるか。
その間まで含めてリズムを作っています。
影響源として重要なのが、アル・ジャクソン・Jr.、リンゴ・スター、レヴォン・ヘルムです。
三人とも派手な演奏を前面に出すより、歌と楽曲の個性を優先するドラマーでした。
ジョーダンも「ドラマーが何をできるか」ではなく、「その曲が何を必要としているか」を基準に音を選びます。
グリップは、両手を同じ形で持つマッチド・グリップと、左手を下から支えるトラディショナル・グリップを使い分けます。
トラディショナル・グリップはジャズの繊細な演奏で使われる印象がありますが、ジョーダンは巨大な会場でも強烈なスネアを鳴らします。
スネアでは打面と金属の縁を同時に叩くリムショットを多用し、ギターやボーカルに埋もれない鋭い音を作ります。
ただし、常に大きな音で叩くわけではありません。
小さなゴーストノートも重要です。
ゴーストノートとは、はっきりした一打の間に入れる、ごく小さな音のことです。
聴き流すと気づかないほど小さいのに、この音があることでリズムに奥行きと粘りが生まれます。
◆TAKUのリアルな聴き方
4-2. チューニングとミュート術

スティーブ・ジョーダンの音作りで特に面白いのが、ライブとスタジオでスネアの方向性を大きく変えることです。
ライブでは、スネアをかなり高く張り、鋭く抜ける音を作ります。
ギター、ベース、ボーカルが集中する中音域を避け、その上を切り裂くような高い音を出すためです。
スネアの表側と裏側で張り具合を変え、音程をずらすこともあります。
これによってタムを叩いたときにスネアの金属線が不必要に共鳴する現象を抑え、音の輪郭を保ちます。
一方、スタジオでは正反対の音を選ぶことがあります。
スネアのヘッドを紙のように緩め、ダクトテープやペーパータオルで強くミュートし、余韻を消します。
ジョーダンが「ディープ・ファット・サッド」と表現する、低く、太く、少し沈んだ音です。
これは1970年代のR&Bやソウルで聞かれる、短く重いスネアを現代的に作り直したものと言えるでしょう。
音を長く響かせるのではなく、必要な瞬間だけ太い衝撃を残す。
この音が入ると、曲全体の重心が一段下がります。
タムは、シェルと呼ばれる胴が最も自然に響く音程を探し、表側と裏側のヘッドを近い高さに合わせます。
基本的にはミュートを抑え、楽器本来の響きを生かします。
ただし、1970年代風の乾いた音が必要な場合には、ヘッドを緩め、タオルを置いて余韻を消すこともあります。
つまり、決まった一つの正解を持っているわけではありません。
曲が必要とする音に合わせて、楽器の性格そのものを変えてしまうのです。
バスドラムは、音程を感じにくくなるほど緩く張ります。
ヘッドにしわが残る寸前から各ボルトを少し締め、内部には毛布などを入れて余分な響きを抑えます。
狙っているのは、長く伸びる低音ではなく、体へ直接届く短い衝撃です。
ミュートは音を悪くする作業ではない
ドラム初心者は、よく響く音ほど良い音だと思いがちです。
しかし録音では、余韻が歌やベースと重なり、曲を濁らせる場合があります。
ジョーダンのミュートは響きを消すのではなく、曲に必要な部分だけを残すための音響設計です。
スネアの裏側では、金属線が触れる両端付近のボルトだけを緩め、ほかを強く張る特殊な調整も行います。
金属線の共鳴する音程を分散し、ほかのドラムを叩いたときの余計なノイズを抑えるためです。
こうした細かな工夫は、ドラマーというより、録音エンジニアやプロデューサーに近い発想ですよね。
4-3. ヤマハと17インチハイハット

スティーブ・ジョーダンは1970年代後半から、長年にわたってヤマハのドラムを使用してきました。
1980年代には輪郭のはっきりした音を持つレコーディング・カスタム、1990年代以降は温かく豊かな響きを持つメイプル・カスタム・アブソリュートを主力としてきました。
2010年には、ジョーダンの要望を反映したクラブ・カスタムが開発されます。
カポール材を使用し、小さな会場でも必要以上に観客を圧倒せず、音楽的な響きを得られることを目指したキットです。
大きなスタジアムでは24インチのバスドラムを使い、ジョン・メイヤー・トリオなどでは22インチや、極端に浅い特注バスドラムを使う場合があります。
会場の広さや楽曲の音量に合わせ、見た目ではなく必要な低音からサイズを選んでいます。
代表的なスネアが、ヤマハのスティーブ・ジョーダン・シグネチャー、MSD1365SJです。
記事で紹介した生産完了シグネチャースネアの中古品
【中古】YAMAHA MSD1365SJ 13×6.5 Steve Jordan Signature Snare
スティーブ・ジョーダン監修の13×6.5インチ・ウッドフープ仕様。生産完了品のため、中古の一点物です。状態は販売ページでご確認ください。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
直径13インチ、深さ6.5インチという小口径で深い胴を採用しています。
13インチの小さな直径によって高い音と素早い反応を得ながら、6.5インチの深さで低音の太さを補う設計です。
木製フープを使っているため、硬いだけではなく温かさも残ります。
なお、このシグネチャーモデルはヤマハの公式製品情報では生産完了品として掲載されています。
中古市場では価格や状態に大きな差があるため、購入時はシェルの変形、フープの傷、金属部品の状態を確認してください。
そして、スティーブ・ジョーダンの機材で最も有名なのが、17インチのクラッシュシンバルを2枚重ねた巨大なハイハットです。
一般的なハイハットは14インチ前後ですが、ジョーダンはパイステの17インチ・クラッシュを上下に組み合わせます。
通常のハイハットにある「チキチキ」という高い音ではなく、低く、柔らかく、面で広がるような音を作るためです。
ハイハットの高音は、ボーカルの子音やアコースティックギターの音域とぶつかることがあります。
大きく薄いシンバルを使うと、高音の角が取れ、歌の下を包むような響きになります。
ここにもボーカルを邪魔しないという発想があります。
| 機材 | 主な仕様 | 音の狙い |
|---|---|---|
| ヤマハ製ドラム | 楽曲や会場でキットを変更 | 必要な音量と響きを選ぶ |
| MSD1365SJ | 13×6.5インチ | 高い抜けと低音の太さを両立 |
| 17インチハイハット | 薄いクラッシュを上下に使用 | 低く柔らかな広がりを作る |
| 細く長いスティック | 長さ16.5インチ | 繊細さと強い一打を両立 |
| 緩く張ったバスドラム | 内部に毛布などを使用 | 短く太い低音を作る |
スティックは、ビックファースのシグネチャーモデルを使用します。
一般的なモデルより細く、長さは16.5インチです。
細さによって繊細な音を出しやすくし、長さによる遠心力で強いリムショットも可能にしています。
力任せに叩かず、道具の長さを利用して大きな音を出す設計です。
機材全体を見ても、ジョーダンは大きな音を出すためだけに大型の道具を選んでいるわけではありません。
音域の整理、ボーカルとの共存、疲労の軽減、会場に合った音量まで含めて選択しています。
4-4. ジョーダンの「隙間」を聴き取るためのオーディオ機材
ここで一つ、音楽好きとしてお伝えしたいことがあります。
ジョーダンの真骨頂である「スネアのゴーストノート」や「17インチハイハットの低い広がり」は、スマホのスピーカーや安価なイヤホンでは完全に潰れてしまいます。
彼の叩く「空間」を正確に聴き取るなら、解像度の高いヘッドホンが必須です。
私がJunky Maryでのボーカルトラック確認時にも意識している、中低域の分離が圧倒的な2つのモデルを比較しておきます。
| モデル | 特徴 | こんな人向け |
|---|---|---|
| SONY WH-1000XM5 | 最高峰のノイズキャンセリングとフラットな原音再生 | 通勤中など、どこでも静寂の中で細かなリズムとゴーストノートを追いたい人 |
| SENNHEISER MOMENTUM 4 | 深く沈み込む低音と、アナログライクな温かみのある音色 | ジョーダンの「ディープ・ファット・サッド」な太いスネアを体感したい本格派 |
ゴーストノートの粒まで聴こえる。名盤を聴き込むならこの一台
SONY WH-1000XM5
業界最高クラスのノイズキャンセリングで、スネアの余韻やハイハットの低い広がりまで細部に集中できます。最大30時間再生・マルチポイント接続対応。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
ロックの厚みも歌の息づかいも。長時間じっくり聴けるワイヤレスヘッドホン
Sennheiser MOMENTUM 4 Wireless
アダプティブノイズキャンセリングと最大60時間再生に対応。自宅でも移動中でも、細部まで自然に広がるサウンドを楽しめます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
※上記からAmazon等の販売ページで現在の価格を確認できます。決して安い買い物ではないので、自分のリスニング環境に合わせて選んでみてください。
5. スティーブ・ジョーダンの名演

スティーブ・ジョーダンを理解する一番の方法は、理屈を覚えることではなく、実際の演奏を聴くことです。
ここでは、ストーンズだけに限定せず、ジョーダンのグルーヴ、音作り、プロデューサーとしての耳が分かる代表作を紹介します。
最初からすべてを集める必要はありません。
気になる一枚を配信で聴き、手元に残したい作品をCDやアナログ盤で選ぶ流れがおすすめです。
5-1. メイヤーとキースとの代表作
John Mayer Trio『Try!』
スティーブ・ジョーダンのグルーヴを聴くなら、まずはこのライブ盤
John Mayer Trio『Try! Live in Concert』
ジョン・メイヤー、スティーブ・ジョーダン、ピノ・パラディーノによる三人編成。太いドラムとベース、自由にうねるギターを生々しいライブ音源で味わえます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
スティーブ・ジョーダンのドラムを初めて聴くなら、最初の候補にしたい作品です。
ジョン・メイヤーのギター、ピノ・パラディーノのベース、ジョーダンのドラムという3人編成で、演奏の隙間まで鮮明に聞こえます。
楽器が少ないため、スネアの音色、バスドラムの重さ、ハイハットの広がりが分かりやすい。
それでいて、ドラムが前に出すぎることはありません。
ジョン・メイヤーの歌とギターが自由に動ける場所を作りながら、曲の腰を低く保っています。
ライブ盤ならではのダイナミクスも魅力です。
小さな音から一気にバンドが膨らむ瞬間でも、ジョーダンは派手なフレーズではなく、一打の強弱で空気を変えます。
John Mayer『Continuum』
スティーブ・ジョーダンの音作りと、歌を支えるグルーヴを聴くなら外せない一枚
John Mayer『Continuum』
スティーブ・ジョーダンがドラマー兼共同プロデューサーとして参加。「Vultures」をはじめ、太いスネアと深いポケットをじっくり味わえます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
2006年の『Continuum』では、ジョーダンがドラマーと共同プロデューサーを務めました。
特に「Vultures」は、ジョーダンの音作りを知るための重要曲です。
低くミュートされたスネアと、大きなハイハットが作る柔らかな裏拍が、曲全体をゆっくり押し進めます。
裏拍とは、通常強く感じる拍と拍の間を強調するリズムです。
ドラムが歌を引っ張るのではなく、ボーカルの後ろに回り込みながら、一定の温度を保っています。
ボーカリストの耳で聴くと、ジョン・メイヤーが力を抜いたまま歌える理由がよく分かります。
Keith Richards『Talk Is Cheap』
キースとスティーブ・ジョーダンの結びつきを聴くなら、この一枚
Keith Richards『Talk Is Cheap』
骨太なギターリフと、深く粘るスティーブ・ジョーダンのドラムが噛み合うロックンロール作品です。商品の仕様は各販売ページでご確認ください。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
キース・リチャーズとスティーブ・ジョーダンの関係を理解するなら、外せない作品です。
ジョーダンは演奏だけでなく、共同プロデュースにも関わっています。
キースのギターが拍の前後を自由に動いても、曲が崩れない。
ジョーダンのドラムが、目立たない太い柱として立っているからです。
ストーンズ加入後の相性は、この作品を聴けば偶然ではなかったと分かります。
Keith Richards『Main Offender』
キースとスティーブ・ジョーダンが刻む、重く粘るロックンロール
Keith Richards『Main Offender』
キース・リチャーズの鋭いギターリフと、スティーブ・ジョーダンの太いドラムが一体化したソロ第2作。反復するリズムの深さを味わえる一枚です。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
『Main Offender』では、『Talk Is Cheap』以上にリズムの反復と音の隙間が重要になります。
キースらしい短いギターリフを、ジョーダンの重いドラムが何度も支え、少しずつ熱を上げていきます。
同じパターンを繰り返しているようで、スネアの強さやハイハットの開き方が微妙に変化しています。
ロックンロールはコードの多さではなく、同じリフをどれだけ深く鳴らせるかで決まる。
そんなことを教えてくれる一枚です。
Donald Fagen『The Nightfly』
緻密な音作りと都会的なグルーヴ。スティーブ・ジョーダンの若き名演を聴く
Donald Fagen『The Nightfly』
スティーブ・ジョーダンが「Walk Between Raindrops」でドラムを担当。ジャズの軽やかさと正確なタイム感が溶け合う、1982年の名盤です。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
ドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』では、「Walk Between Raindrops」のドラムを担当しています。
ジョーダンの若い時期の録音ですが、ジャズのスウィング感と、スタジオ作品に求められる正確さを両立しています。
重くミュートした後年の代表的な音とは違うため、彼の演奏の幅を知るうえでも重要です。
Chuck Berry『Hail! Hail! Rock ‘n’ Roll』
チャック・ベリーとキース、若きスティーブ・ジョーダンが刻むロックンロールの原点
Chuck Berry『Hail! Hail! Rock ‘n’ Roll』
チャック・ベリーの生誕60周年記念公演を収めた音楽映画。キース・リチャーズが音楽監督を務め、スティーブ・ジョーダンの力強いドラムも映像で楽しめます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
チャック・ベリーの音楽を支える若きジョーダンの姿を、演奏と映像の両方で確認できます。
キースとの信頼関係が形になった作品であり、後のエクスペンシヴ・ワイノーズ、そしてストーンズへ続く出発点です。
ドラムの技術だけでなく、予測不能なチャック・ベリーへ反応し続ける集中力にも注目してください。
The Rolling Stones『Foreign Tongues』
スティーブ・ジョーダンが新たな心臓となった、現在進行形のローリング・ストーンズ
The Rolling Stones『Foreign Tongues』
スティーブ・ジョーダンの引き締まったドラムと、キース&ロニーのギターが生む新たなグルーヴを味わえる一枚。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
2026年7月10日に発売されたストーンズの『Foreign Tongues』では、ジョーダンがメインのドラマーとしてバンドを支えています。
ストーンズのルーズなギターと、ジョーダンの引き締まったリズムがどのように共存しているのかを確認できる作品です。
生前のチャーリー・ワッツの演奏を使った曲も収録されているため、二人の違いを同じ作品の中で感じ取れます。
アルバム全体の内容は、『Foreign Tongues』全曲解説で詳しく紹介しています。

発売形態や在庫は変動します。
CD、アナログ盤、限定盤の正確な仕様については、公式サイトや各販売店の商品ページをご確認ください。
最初に選ぶならこの3作品
ライブの迫力を聴くなら、John Mayer Trio『Try!』。
スタジオでの音作りを聴くなら、John Mayer『Continuum』。
キースとの相性を知るなら、Keith Richards『Talk Is Cheap』がおすすめです。
5-2. 配信とCDで名演を聴く方法
まず気軽に聴き比べたい方は、Amazon Music Unlimited、Apple Music、Spotifyなどの音楽配信サービスで作品名を検索する方法があります。
スティーブ・ジョーダンは参加作品が非常に多いため、アルバム単位だけでなく、曲ごとのクレジットも確認すると新しい発見があります。
配信作品、無料体験の有無、料金、音質、対象地域は時期や契約状況によって変わります。
正確な情報は各配信サービスの公式サイトをご確認ください。
5-3. 名演の高音質音源を「一番損せず」に聴き込むなら
CDやアナログ盤をじっくり集めるのも最高ですが、「今すぐジョーダンの参加作品を横断して聴き比べたい」なら、高解像度(ハイレゾ)配信に対応しているAmazon Music Unlimitedを入口にするのが結局いちばんコスパが良いです。
YouTubeの圧縮音源では、彼が意図した余韻の消え際や、歌とスネアの間の絶妙な呼吸までは聞こえません。
最初の30日間は無料で試せるので、まずは『Try!』の1曲目だけでも、本来の音質で聴いてみてください。
「やっぱりCDで手元に置きたい」と思えば無料期間中に解約すれば1円もかかりません。リスクゼロで彼の本当のグルーヴを体感できます。
配信の利点は、紹介した作品を短時間で横断して聴けることです。
『Try!』でライブの躍動感を確認し、『Continuum』で録音されたスネアの音を聴き、『Talk Is Cheap』でキースとの呼吸を確かめる。
この順番なら、ジョーダンの魅力を立体的に理解できます。
一方、CDやアナログ盤には、作品単位で音楽と向き合える良さがあります。
参加ミュージシャンや制作クレジットを読みながら聴くと、ジョーダンがドラマーだけでなく、共同プロデューサーや作曲者として関わっていることも確認できます。
特に手元に残したい候補は、次の作品です。
CD・アナログ盤で持っておきたい代表作
John Mayer Trio『Try!』
John Mayer『Continuum』
Keith Richards『Talk Is Cheap』
Keith Richards『Main Offender』
Keith Richards『Crosseyed Heart』
Donald Fagen『The Nightfly』
The Rolling Stones『Foreign Tongues』
同じアルバムでも、通常盤、再発盤、リマスター盤、輸入盤、アナログ盤など複数の仕様が販売されている場合があります。
中古盤を選ぶ場合は、ディスクの状態、付属品、再生方式、販売者の説明を確認してください。
アナログ盤は、再生機器を持っていないと聴けません。
最初は配信で作品を聴き、繰り返し聴きたい一枚だけを購入するのが無理のない選び方かなと思います。
そして、ジョーダンのドラムを聴くときは、派手なフィルインを待たないでください。
スネアが鳴った後の空間、歌の語尾、ベースが動く瞬間、ハイハットの低い広がりを聴く。
そこに、スティーブ・ジョーダンというドラマーの本当の仕事があります。
スティーブ・ジョーダンの名演を聴く際、どちらを選ぶか迷う方のために整理しました。
【音楽配信サービス】
メリット
デメリット
【アナログ盤・CD】
メリット
デメリット
5-4. よくある質問とまとめ
最後に、スティーブ・ジョーダンについて調べている方が疑問に感じやすい点を整理します。
ストーンズでの立場、チャーリー・ワッツとの関係、名演、使用機材などを簡潔に確認しておきましょう。
- スティーブ・ジョーダンはなぜストーンズのドラマーになったのですか?
-
1980年代から続くキース・リチャーズとの信頼関係と、チャーリー・ワッツ本人の推薦が大きな理由です。
ジョーダンはキースのソロバンドでドラマー、共同プロデューサー、作曲者を務めており、ストーンズの音楽的な呼吸を理解していました。
そのため、単に技術の高い有名ドラマーを連れてきたのではなく、バンドの歴史を理解する人物が選ばれたと言えます。
- チャーリー・ワッツとスティーブ・ジョーダンは何が違いますか?
-
チャーリーはジャズを基礎に、拍の後ろへ音を置く独特な揺れを作るドラマーでした。
ジョーダンはR&Bやファンクの影響が強く、拍の中心を太いスネアとバスドラムで支えます。
チャーリーがキースのギターに反応して揺れるタイプなら、ジョーダンは強い土台を作り、その上でキースを自由に動かすタイプです。
- スティーブ・ジョーダンのドラムはなぜ評価されているのですか?
-
音数の多さではなく、曲に必要な一打を選び、歌やほかの楽器を生かす能力が高く評価されています。
スネアの音程、ハイハットの大きさ、ミュートの方法まで調整し、アンサンブル全体を設計します。
ドラマーでありながら、プロデューサーの視点で曲を作れる人物です。
- スティーブ・ジョーダンの名演はどの作品で聴けますか?
-
最初の一枚には、John Mayer Trio『Try!』がおすすめです。
スタジオでの音作りはJohn Mayer『Continuum』、キース・リチャーズとの相性は『Talk Is Cheap』で確認できます。
ストーンズでの現在の演奏を聴くなら『Foreign Tongues』が候補です。
配信状況や販売状況は変わるため、正確な情報は各サービスや販売店の公式ページをご確認ください。
- 17インチのハイハットを使う理由は何ですか?
-
一般的なハイハットより低く、柔らかく、広がりのある音を作るためです。
高音の鋭さを抑えることで、ボーカルやアコースティック楽器の音域を邪魔せず、曲を下から包むような響きになります。
変わった見た目を狙ったものではなく、歌を生かすための音響的な選択です。
- スティーブ・ジョーダンのシグネチャーモデルのドラムスティックは初心者にもおすすめですか?
-
やや細く長さがある(16.5インチ)特殊な仕様のため、必ずしも万人の初心者向けとは言えません。しかし、遠心力を活かしたスナップや繊細なコントロールを学びたい方にとっては、表現の幅を広げる非常に優れた選択肢になります。
- ダクトテープやペーパータオルを使ったミュートは一般的なテクニックですか?
-
はい、レコーディングスタジオでは古くから使われている一般的な手法です。ただしジョーダンの場合、「ただ響きを消す」のではなく、楽曲の帯域に合わせて意図的に特定の低音や太さだけを残す“プロデューサー視点の音響設計”として徹底して活用している点が特徴です。
- チャーリー・ワッツ時代のルーズなノリが好きですが、ジョーダン期のストーンズも楽しめるでしょうか?
-
最初はタイトさに違和感を覚える方もいますが、キース・リチャーズの揺れるギターを「強固な土台で支える」という新しいダイナミズムを楽しめます。過去の模倣ではない現在進行形のストーンズの音として、先入観を持たずに『Foreign Tongues』などの最新作を聴いてみることをおすすめします。
結論

スティーブ・ジョーダンは、手数の多さや速さで自分を主張するドラマーではありません。
音の大きさ、長さ、音程、余白を使い、歌と楽器が最も気持ちよく響く場所を作るドラマーです。
ブロンクスでジャズを学び、SNL、ブルース・ブラザーズ、24丁目バンド、数々のスタジオ録音を経験し、キース・リチャーズの最も信頼する音楽的パートナーの一人になりました。
そして、チャーリー・ワッツ亡き後のストーンズという、誰も簡単には引き受けられない場所へ立ちました。
そこで彼が選んだのは、チャーリーを完全にまねることではありません。
チャーリーが作った歴史へ敬意を払いながら、自分自身のグルーヴでストーンズを支えることでした。
もちろん、チャーリー時代のルーズな揺れを愛する方にとっては、ジョーダンのタイトな演奏に違和感があるかもしれません。
その感覚も間違いではありません。
しかし、違いがあるからこそ、ストーンズは過去の再現だけではない現在進行形のバンドとして鳴り続けています。
ジョーダンのドラムをまだ深く聴いたことがない方は、まず『Try!』『Continuum』『Talk Is Cheap』のいずれかを選んでみてください。
そして、スネアの一打だけでなく、その一打が鳴るまでの空間を聴いてみてください。
あなたは、その余白から何を感じるでしょうか。
- ジョーダンの本質は歌を支えるグルーヴにある
- チャーリーとは異なるR&B型の太いタイム感を持つ
- 機材とチューニングは楽曲全体の音域を考えて選ばれている
- 入門には『Try!』『Continuum』『Talk Is Cheap』がおすすめ
- ストーンズでは模倣ではなく敬意ある継承を実践している
派手に叩かなくても、曲の心臓になれる。
スティーブ・ジョーダンのドラムは、そのことを一打ごとに証明しています。
※本記事内のアーティストの経歴やエピソードについては、過去の国内外のインタビュー等に基づく一般的な定説を参考にしています。
※使用機材やチューニングに関する記述は、特定時期のレコーディングやライブに基づくものであり、現在は変更されている可能性があります。


