『Scratchy Sounds』全43曲の魅力とCD入手法

赤と黒のパンク調デザインに、レコードを回すDJと観客の姿。ザ・クラッシュとの関係を示す見出しと「Scratchy Sounds」全43曲の文字が並ぶ。

こんにちは、ジェネレーションBのTAKUです。

ザ・クラッシュを聴いていて、彼らが影響を受けたジャマイカの音楽をもっと知りたいと思ったことはありませんか。

レゲエやスカのコンピレーションは山ほどあります。

しかし、今回紹介する『Barry Myers Presents Scratchy Sounds』は、選曲した人物の経歴からして、ちょっと気になる作品なんです。

選曲者は、1978年から1980年にかけてザ・クラッシュのツアーDJを務めたバリー・マイヤーズ。通称スクラッチー。

2004年にTrojan Recordsから発売された本作には、スカ、ロックステディ、ルーツ・レゲエ、ダブなど全43曲が収録されています。

これはどんなアルバムなのか。クラッシュ好きにも楽しめるのか。そして現在、正規盤CDを入手するにはどうすればいいのか。

収録曲の聴きどころから盤の選び方まで、じっくり紹介します。

この記事でわかること

目次

1. バリー・マイヤーズとは

このCDを面白くしているのは、何よりも選曲者の経歴です。

1-1. クラッシュのツアーDJ

暗いDJブースに立つスーツ姿の男性がマイクを持ち、レコードプレーヤーに手を添えている。右側にはパンクとレゲエをつなぐDJの役割を伝えるオレンジ色の見出しがある。
スクラッチーは1978~1980年にクラッシュのツアーDJを務め、開演前の会場を音楽で満たした。

バリー・マイヤーズは、1970年代のロンドンで活動を始めたDJです。

スクラッチーという愛称で知られ、1976年にはロンドンのクラブ、ディングウォールズでレジデントDJを務めていました。

当時の彼の選曲は、パンクだけではありません。

ラモーンズ、MC5、イギー・ポップ、ニューヨーク・ドールズといったロックに、レゲエ、スカ、R&B、ロカビリー、1960年代のソウルまで混ぜていたんです。

その選曲を気に入ったのが、ジョー・ストラマーたちでした。

1978年、マイヤーズはザ・クラッシュのツアーDJとして同行することになります。

バンドの演奏前にレコードを回し、観客を迎える。そんな役割です。

いわば、クラッシュのライブが始まる前から、会場の音楽を作っていた男ですね。

本人の公式サイトでは、ザ・クラッシュのほか、ジョー・ストラマー&ザ・メスカレロス、ザ・ポーグス、ゴーゴル・ボルデロなどとの活動も紹介されています。

参照:Scratchy Sounds公式プロフィール

1-2. パンクもレゲエも同じレコード棚

私は、この人の選曲に対する考え方が好きです。

パンクはパンク、レゲエはレゲエ。そんなふうに棚を分けて考えない。

本人もインタビューで、当時のDJセットにはパンクだけでなく、ロカビリー、スカ、ソウル、ガレージ・パンク、ルーツ・レゲエなど、クラッシュに影響を与えた音楽をかけていたと語っています。

音楽のジャンルは違っても、共通するのは人間を踊らせるリズムや、その音楽が持っている態度です。

クラッシュが後にレゲエやダブへ接近していく流れを考えると、彼らのツアーDJがこういう人物だったことにも納得がいきます。

ただし、マイヤーズがバンドの音楽性を一人で決定づけたという話ではありません。

互いに興味を持っていた音楽を、ライブ会場という場所で共有していた。その関係こそ面白いと思います。

1-3. 2004年に発売された選曲集

本作の正式タイトルは『Barry Myers Presents Scratchy Sounds (Ska, Dub, Roots & Reggae Nuggets)』。

2004年10月25日に、英国Trojan Recordsから発売されたコンピレーションです。

項目 内容
タイトル Barry Myers Presents Scratchy Sounds (Ska, Dub, Roots & Reggae Nuggets)
選曲 Barry ‘Scratchy’ Myers
発売年 2004年
レーベル Trojan Records
英国盤規格品番 TJDDD 218
英国盤バーコード 5050159921829
CD構成 2枚組
収録曲数 43曲(Disc 1:22曲/Disc 2:21曲)
総収録時間 約2時間24分

英国盤の規格品番と収録曲数は、ReggaeRecord.comの商品情報と各音楽データベースで確認できます。

なお、販売店によって商品登録上のディスク枚数や曲名表記に違いが見られるため、購入時には規格品番と実際の収録内容を照合してください。

そして、重要なことを一つ。

本作はザ・クラッシュのアルバムでも、ツアーの実況録音でもありません。

マイヤーズが自身の音楽的な好みで選んだ、ジャマイカ音楽のコンピレーションです。

本人もインタビューで、クラッシュに影響を与えた音楽をDJセットに取り入れていたと語っています。

それでも、クラッシュの音楽を違う角度から聴き直すには、なかなか興味深い選曲になっています。

2. 全43曲の収録内容と聴きどころ

43曲という曲数は、最初から全部覚えようとすると少し大変です。しかし、曲順には聴く楽しみがあります。

2-1. まず押さえたい5つの注目曲

全曲を通して聴く前に、特に注目してほしい5曲を挙げておきます。

Big Youth『Johnny Reggae』

白黒のレコード店でヘッドフォンを掛けた男性がターンテーブルの前に座り、オレンジ色の「歌うのではなく、言葉を置く」という文字とトースティングの説明が重ねられている。
Big Youthの「Johnny Reggae」は、言葉の置き方そのものがリズムになるトースティングの入口。

Disc 1のオープニングを飾るのが、ビッグ・ユースの『Johnny Reggae』です。

ビッグ・ユースは、レゲエのトースティングを代表する存在の一人。トースティングとは、既存のリズムに合わせて言葉を語ったり、即興的に声を乗せたりするスタイルです。

メロディを歌い上げるというより、言葉の置き方そのものがリズムになっています。

ボーカルをやっている私には、こういう歌い方が興味深い。音程を正確に追うこととは違う、声の使い方だからです。

クラッシュ好きなら、後の『The Magnificent Seven』などに通じる、リズムと言葉の関係を意識してみるのも面白いでしょう。

Niney『Blood & Fire』

Disc 1の10曲目は、ナイニー・ジ・オブザーヴァーの『Blood & Fire』。

本作に収録されているのは、約6分24秒の12インチ・ヴァージョンです。

短いシングル曲とは違い、リズムが続いていく時間そのものが重要になる。

ベースやドラムの反復の中で、声がどのように存在しているのか。そこを聴いてほしい曲です。

レゲエをロックのような曲展開だけで追いかけると、この面白さは見落としやすいかもしれません。

Lee Perry『Baffling Smoke Signal』

リー・スクラッチ・ペリーの『Baffling Smoke Signal』は、約6分18秒の収録。

ペリーの魅力は、単に変わった音を使うところではありません。

音を加えることだけでなく、音を引き算し、残響や空間を音楽の一部にしてしまう発想です。

ちなみに、選曲者のバリー・スクラッチー・マイヤーズと、リー・スクラッチ・ペリーは別人なので混同しないように。

Mr. Bojangles『Ten Dread Commandments』

Disc 2の6曲目には、ミスター・ボージャングルズの『Ten Dread Commandments』が収められています。

トースティングという表現が、単なる楽曲の合間の掛け声ではなく、音楽の主役になっていることを感じられる選曲です。

メロディの起伏だけでは説明できない、言葉と拍の関係がここにはあります。

Dadawah『Seventy-Two Nations』

最後に収録されているのが、ダダワーの『Seventy-Two Nations』。

収録時間は約10分43秒。43曲の締めくくりとしては、かなり長い作品です。

ダダワーは、ラス・マイケルによる音楽活動の一つとして知られています。

ニャビンギの太鼓や宗教的な響きを感じさせるこの音楽は、軽快なスカや初期レゲエとは異なるところに連れていってくれます。

最後を短いヒット曲で景気よく終わらせない。

この曲を締めに置いたところに、選曲者の好みがよく表れていると思います。

2-2. Disc 1の全22曲

まずは1枚目。トースティングから始まり、スカ、ロックステディ、ダブ、ルーツ・レゲエへと移っていきます。

以下の曲名・曲順は2004年版の43曲構成を基準とし、各曲の注目ポイントを簡潔に添えました。

No. アーティスト/曲名 聴きどころ
1 Big Youth
Johnny Reggae
最初の一曲からトースティング。歌と語りの境界に注目。
2 Errol Dunkley
Stop Your Gun Shooting
後続のヴァージョンとの比較が面白い原曲。
3 Musical Intimidator
Stop Your Gun Shooting (Version)
同じリズムから別の音楽を作る、ヴァージョン文化の入口。
4 Lizzy
Love Is a Treasure
女性のトースティング表現にも耳を向けたい。
5 The Pioneers
Money Day
初期レゲエ特有の軽快なリズムを楽しむ曲。
6 Susan Cadogan
Fever
有名なスタンダード曲がジャマイカの音楽としてどう響くか。
7 Dennis Brown
The Feeling Is Right
デニス・ブラウンの歌の表情に注目したい。
8 C. Hyman
The Ska Rhythm
スカのリズムを端的に味わえる一曲。
9 Derrick Morgan
Moon Hop
初期ジャマイカ音楽のダンス感覚が伝わる選曲。
10 Niney
Blood & Fire (12″ Version)
約6分半の拡張版。反復するリズムをじっくり味わいたい。
11 The Rulers
Copasetic
ロックステディ期の選曲として注目。
12 Bruce Ruffin
The Bitterness of Life
歌のメロディとリズムの落ち着いた関係を聴く。
13 Winston Scotland
On the Track
DJの声を中心に聴く楽しさがある。
14 Gregory Isaacs / The Revolutionaries
Leaving (Dub)
歌ものとダブの違いを意識したい一曲。
15 The Tennors
Ride Your Donkey
軽快なコーラスと初期レゲエの親しみやすさ。
16 The Tennors
Copy Me Donkey
前曲と続けて聴くことで、グループの持ち味がつかみやすい。
17 John Holt
Sister Big Stuff
ソウルとジャマイカ音楽の結びつきを感じる選曲。
18 Max Romeo
Public Enemy Number One
マックス・ロメオの声と曲の緊張感に注目。
19 Lee Perry
Baffling Smoke Signal
リー・ペリーの実験的な音作り。
20 Dave & Ansel Collins
On Broadway
アメリカの有名曲をジャマイカ流に解釈した一曲。
21 Jackie Edwards
Invasion (AKA Wa Da Da)
次曲と対になっている原曲。
22 Jackie Edwards / The Aggrovators / King Tubby
African Roots (The Invasion Version)
原曲とヴァージョンの違いを続けて確認できる。

この1枚目で注目したいのは、2曲目と3曲目、21曲目と22曲目の配置です。

原曲を流した直後に、そのヴァージョンを持ってくる。

ロックの世界でも同じ曲の別テイクを聴き比べる楽しみはありますが、ジャマイカ音楽では同じリズムを使いながら、歌い手やミックスを変えて新しい作品を生み出す文化が発達しました。

ダブを単なるインストゥルメンタル版と考えると、ここは少し違います。

既存の録音から一部の音を抜き、ベースやドラムを前面に出し、エコーや残響によって新しい空間を作る。ミキシング自体が創作になるんです。

このCDは、その違いを曲順の中で理解できるところがいいですね。

白黒のDJとレコードプレーヤーを背景に、左の橙色の枠が原曲のボーカルと演奏、右の黒い枠がダブのエコーや音の余白を説明する比較図が配置されている。
Disc 1には原曲とヴァージョンが連続する組み合わせがあり、ミックスの違いを聴き比べられる。

2-3. Disc 2の全21曲

2枚目は、歌もの、トースティング、ダブなどを行き来しながら、最後の長尺曲へと進みます。

No. アーティスト/曲名 聴きどころ
1 The Survivors
Rawhide
2枚目の始まりを飾る、スカ期のインストゥルメンタル。
2 Ken Boothe
Freedom Time (AKA Freedom Day)
ケン・ブースの歌を中心に聴きたい。
3 Charmers Big Band
Freedom Time (Version)
前曲のリズムを別の形で味わえる。
4 U-Roy / Slim Smith
Love I Bring
歌とトースティングの関係を聴き比べたい一曲。
5 The Heptones
Book of Rules
ヘプトーンズのコーラスと歌のまとまり。
6 Mr. Bojangles
Ten Dread Commandments
言葉をリズムに乗せるトースティングの魅力。
7 Toots & The Maytals
It Was Written Down
トゥーツ・ヒバートの歌の押し出しに注目。
8 Prince Jammy / The Revolutionaries
Brothers of the Blade
プロデューサー/エンジニアの仕事を意識して聴くダブ。
9 Delroy Wilson
Cool Operator
短い時間の中に収まった歌の魅力。
10 The Soul Sisters
Wreck a Buddy
初期レゲエのダンス感覚に注目。
11 Dennis Alcapone / Lizzy
Ba Ba Ri Ba
男女のDJによる掛け合いを楽しみたい。
12 Black Art
The Vampire
リー・ペリーに関連するダブ作品。音の空間が主役になる。
13 Tapper Zukie
Revolution
トースティングとリズムの組み合わせ。
14 Musical Intimidator
Revolution (Version)
前曲との連続再生でヴァージョンの面白さを確認。
15 Augustus Pablo
Vibrate On (Dub Version)
ダブならではの音の配置と余白を味わいたい。
16 The Ethiopians
The Whip
初期ジャマイカ音楽のリズムとコーラス。
17 The Destroyers
Machockies (AKA The Spoke)
スカから初期レゲエへつながる音楽として注目。
18 Niney / King Tubby
Parade
ナイニーとキング・タビーの名前が並ぶ一曲。
19 Dennis Alcapone
In Fine Style
トースティングのリズム感をもう一度楽しむ。
20 Hopeton Lewis
Cool Collie
ロックステディの歌心を感じる曲。
21 Dadawah
Seventy-Two Nations
約10分43秒。深いルーツ音楽の響きでアルバムを締める。

2枚目では、トゥーツ&ザ・メイタルズやヘプトーンズといった比較的知られた名前の間に、マニアックな録音が自然に入り込んでいます。

DJの選曲集らしいところです。

有名だから中心に置くのではなく、その前後に何をかけると面白くなるかで曲順が決まっているように感じます。

◆TAKUのひとこと

このCDは、好きな曲だけを抜き出して聴くのもいいんですが、できれば順番を変えずに再生してほしいですね。原曲の直後にヴァージョンが来るところなんて、選曲者が何を聴かせたいのか伝わりやすいと思います。

2-4. スカからダブへどう変わるのか

レコード店でジャケットを手にする革ジャン姿の男性を背景に、スカ、ロックステディ、初期レゲエ、ルーツ、ダブの五つを色分けした矢印が横一列に並んでいる。
全43曲を通して、スカからダブまで多彩なジャマイカ音楽を行き来できる。

ここで、収録されている音楽の大まかな違いを押さえておきましょう。

ジャンル 音楽的な特徴 本作の注目曲
スカ 裏拍の刻みと軽快なダンスリズム The Ska Rhythm/Rawhide
ロックステディ スカより落ち着いたテンポと歌の存在感 Copasetic/Cool Collie
初期レゲエ ベースとドラムが作る独特の推進力 Money Day/Ride Your Donkey
ルーツ・レゲエ 精神性や社会的な題材と結びついた表現 Blood & Fire/Seventy-Two Nations
ダブ 既存録音の音を抜き差しし、残響や空間を作り直す African Roots/Vibrate On
トースティング 既存のリズムに言葉や掛け声を乗せる Johnny Reggae/Ten Dread Commandments

なお、これらは完全に独立した分類ではありません。実際の録音では複数の要素が重なります。

レゲエを初めて聴く人は、つい歌のメロディばかり追ってしまうかもしれません。

でも、ドラムとベースの位置関係を意識するだけで、同じ曲が違って聞こえてくるはずです。

3. クラッシュ好きに聴いてほしい理由

では、なぜザ・クラッシュのファンにこのCDを紹介したいのか。

単に元ツアーDJが選曲したからではありません。

3-1. 『Police & Thieves』の向こう側

クラッシュとジャマイカ音楽の関係を語るとき、外せないのが『Police & Thieves』です。

1976年にジュニア・マーヴィンが発表し、リー・スクラッチ・ペリーがプロデュースした楽曲を、クラッシュは1977年のデビュー・アルバムでカバーしました。

原曲の持つレゲエのリズムを、パンクバンドの演奏で表現したわけです。

ここで面白いのは、クラッシュがレゲエを単なる異国情緒として使ったわけではないこと。

社会的な緊張感を持つ曲を、自分たちの音楽として演奏していたんです。

その後も彼らは、ウィリー・ウィリアムズの『Armagideon Time』をカバーし、『Bankrobber』ではマイキー・ドレッドと仕事をしています。

この流れを知ったうえでスクラッチーの選曲を聴くと、クラッシュが影響を受けた音楽の広がりが、さらに具体的に感じられるでしょう。

初期クラッシュについては、『白い暴動』『動乱』の日本盤とUK盤の違いも紹介しています。

3-2. 『ロンドン・コーリング』との接点

1979年の『ロンドン・コーリング』を、単にパンクから音楽性を広げた作品として説明することがあります。

確かに間違いではありません。

しかし、レゲエ、スカ、ロカビリー、R&Bなどを当たり前のように並べていた当時のDJ文化を知ると、もう少し違った聞こえ方をします。

クラッシュは、突然それまで知らなかった音楽へ飛び込んだわけではないんですね。

自分たちの周囲に存在していた音楽を吸収し、バンドの演奏として組み直していった。

たとえば、アルバム収録曲の『Rudie Can’t Fail』。

ホーンを交えた軽快なリズムを聴くと、クラッシュの音楽がパンクという言葉だけでは説明しきれないことが分かります。

スクラッチーのCDに収録された『Moon Hop』や『Ride Your Donkey』などを聴いたあとで戻ってみると、また別の楽しみ方ができますよ。

関連記事:ザ・クラッシュ『ロンドン・コーリング』を全ロックファンが聴くべき理由

3-3. 『サンディニスタ!』への入口

さらに進むなら、1980年の『サンディニスタ!』です。

クラッシュがダブ、ファンク、ヒップホップなどへ音楽的な実験を広げた3枚組アルバム。

ロックのアルバムとして考えると、かなり自由な作品です。

その自由さを理解する手がかりになるのが、ジャマイカ音楽におけるヴァージョン文化だと思います。

『サンディニスタ!』では、こうしたヴァージョン文化の発想が、ロックバンドの作品として大胆に展開されています。

録音された曲は、完成した時点で動かせなくなるものではないんです。

『Scratchy Sounds』でダブに慣れてから『サンディニスタ!』を聴けば、その実験性も理解しやすくなるのではないでしょうか。

レンガ壁を背に立つ四人のバンド写真に、オレンジ色の円と両方向の矢印が重ねられている。ロンドン・コーリングとサンディニスタに通じる選曲の雑食性を解説している。
『London Calling』から『Sandinista!』へ。ジャマイカ音楽のリズムやヴァージョン文化を手がかりに聴き直す。

3-4. レゲエだけで終わらない選曲感覚

もう一つ、勘違いしたくないことがあります。

『Scratchy Sounds』はジャマイカ音楽を集めたCDですが、マイヤーズ自身のDJ活動がレゲエだけに限定されていたわけではありません。

2019年にはザ・クラッシュのSpotify公式アカウントから、彼が選曲した『Scratchy Sounds: London Calling Session』というプレイリストも公開されています。

こちらは20曲構成で、ガレージ・パンク、ルーツ・レゲエ、スカ、ロックンロール、R&Bなどを収録したものです。

2004年のCDとは別の選曲作品なので、混同しないようにしてください。

2004年の本作がジャマイカ音楽に絞った一枚なら、2019年のプレイリストは、マイヤーズがどのような音楽を同じDJセットでかけていたかを知る補助資料になります。

参照:The Clash公式プレイリスト『Scratchy Sounds: London Calling Session』

3-5. もう一枚聴くならこの作品

このCDを入口にして、ジャマイカ音楽をさらに聴いてみたい人には、映画『ハーダー・ゼイ・カム』のサウンドトラックも面白いと思います。

ジミー・クリフ、メイタルズ、メロディアンズ、デズモンド・デッカーなど、異なる歌い手の個性を楽しめる作品です。

スクラッチーのCDがDJの選曲感覚を味わうものなら、こちらは1970年代初頭のジャマイカ音楽を映画と結びつけて知る入口になります。

もう一枚、ジャマイカ音楽を聴くなら。

『Scratchy Sounds』で気に入った曲が見つかったら、次は映画『ハーダー・ゼイ・カム』のサントラへ。ジミー・クリフをはじめ、当時のジャマイカ音楽を一枚で楽しめます。

PR
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』サウンドトラックCDのジャケット

『Scratchy Sounds』の次に聴きたい、ジャマイカ音楽の名盤。

『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』
オリジナル・サウンドトラック

ジミー・クリフをはじめ、ジャマイカ音楽の魅力を凝縮した映画サウンドトラック。スカや初期レゲエに興味を持った方に、もう一枚。

※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。

このサントラには、今回紹介した『Scratchy Sounds』とはまた違った魅力があります。収録曲やアーティストについてもう少し掘り下げたい方は、『ハーダー・ゼイ・カム』サントラ全曲解説もぜひご覧ください。

4. Scratchy SoundsのCD入手方法

では、現在このアルバムを聴いたり、CDを購入したりするにはどうすればいいのでしょうか。

2004年発売の輸入盤だけに、商品名だけで探すと別の版や配信商品が混在することがあります。

4-1. 最初に探すなら英国盤CD

赤い「Scratchy Sounds」風レコードジャケットとDJの絵を背景に、英国盤の規格品番TJDDD 218を大きく表示。全43曲・2枚組、米国盤、配信版の確認事項を右側にまとめている。
英国Trojan盤を探す際は、規格品番「TJDDD 218」と2枚・43曲の収録内容を照合したい。

私なら、まず英国Trojan盤の規格品番「TJDDD 218」で探します。

全43曲・2枚組という内容を確認しやすいためです。

CDを探すときの確認事項

  • 正式タイトル:Barry Myers Presents Scratchy Sounds
  • 英国盤規格品番:TJDDD 218
  • バーコード:5050159921829
  • 収録内容:Disc 1が22曲、Disc 2が21曲
  • レーベル:Trojan Records

2026年9月29日時点で確認したところ、タワーレコードの同規格の商品ページには「現在ご注文いただけません」と表示されています。

ReggaeRecord.comでも英国盤は在庫なしとなっています。

したがって、通常の新品流通だけに期待するより、輸入盤や中古盤を並行して探す方が現実的でしょう。

英国Trojan盤を探している方へ。

『Scratchy Sounds』の43曲入りCDを探すなら、まず規格品番「TJDDD 218」で検索してみてください。中古盤は出品状況が変わるため、Amazonと楽天の両方を確認しておくと便利です。

PR
Barry Myers Presents Scratchy SoundsのCDジャケット

ザ・クラッシュの音楽を、もう一歩深く聴きたい人へ。

Barry Myers Presents
Scratchy Sounds

クラッシュの元ツアーDJ、バリー・マイヤーズが選曲した全43曲のコンピレーション。2004年発売の英国Trojan盤(当時はSanctuary傘下)。規格品番はTJDDD 218。

※中古盤は、購入前に規格品番・ディスク枚数・収録曲数をご確認ください。

※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。

ただし、中古市場における出品状況や販売価格は頻繁に変わります。購入直前に必ず確認してください。

4-2. 中古盤で間違えやすいところ

本作には、英国盤のほかに米国向けの商品登録もあります。

米国盤の規格番号として「80502」が確認でき、商品情報によって曲名表記や曲順・収録内容が異なる場合があります。

実際に米国向け販売ページと英国盤の曲目表示を比較すると、掲載内容には相違が見られます。

商品タイトルだけで43曲すべてが入っていると判断しないことが大切です。

確認項目 購入時の注意点
規格品番 英国盤TJDDD 218など、商品情報と一致するか
ディスク枚数 実物が2枚そろっているか
収録曲 43曲構成を探すなら、曲目を照合する
盤面 傷、再生不良、研磨歴の有無
ジャケット 破れ、日焼け、水濡れ、ケースの破損
付属物 ブックレットや裏ジャケットの欠品
送料 海外発送の場合は送料や税金を含めた総額

私が特に確認したいのは、ディスクの枚数と曲目、それからブックレットの有無です。

古いコンピレーションを買う楽しみには、収録曲の情報や選曲者のクレジットを手元で読めることも含まれます。

盤だけが裸で届いたら、ちょっと寂しいですからね。

4-3. 配信で聴く場合の注意点

本作は、Apple MusicやSpotifyなどの音楽サービスでもアルバム情報が確認できます。

Apple Musicの掲載情報では43曲・約2時間24分、Qobuzでも43曲構成として登録されています。

一方、Amazon Musicの一部地域向け商品ページでは42曲と表示されています。

この違いは重要です。

CDと配信の内容が必ず同じとは限らず、国・地域や配信版によって表示や再生可能な曲が異なる場合があります。

全43曲を聴くことが目的なら、曲数と最後の『Seventy-Two Nations』まで収録されているかを確認しておきたいところです。

また、配信開始年が2008年などと表示される場合がありますが、アルバムのオリジナル発売年は2004年です。

配信サービス上の登録日と、CDの発売日を混同しないようにしましょう。

※配信状況・価格・在庫情報は2026年9月29日時点の確認情報です。日本国内での再生可否、契約条件、販売状況は各サービス・販売店で最新情報をご確認ください。

4-4. CDを買う価値はどこにあるか

収録曲だけを聴きたいなら、配信版で十分という人もいるでしょう。

それでも、本作を気に入ったなら、私はCDを探す選択もありだと思います。

43曲を選び、2枚組の流れとして一つの作品にしたこと自体に意味があるからです。

単曲でお気に入りだけを集めるプレイリストとは、少し楽しみ方が違います。

ただし、希少な廃盤だからという理由だけで高額な中古盤を買う必要はありません。

まず配信で音楽を確かめ、全曲の流れが気に入ったなら、状態の良い正規盤CDを探す。

私は、この順番が一番納得しやすいと思います。

4-5. さらに深く知りたい人へ

マイヤーズ本人について興味が深まったら、2026年に刊行された回想録『A Voice From The Wings: From Dingwalls To The Clash』もチェックしてみてください。

出版元はTangent Booksです。

クラッシュのツアーDJになるまでの歩みや当時の活動を、本人の言葉と写真資料からたどれる一冊です。

CDがマイヤーズの音楽的な好みを知る作品なら、こちらはその人間がいた時代を知るための資料になります。

参照:Tangent Books公式商品ページ

4-6. Scratchy Soundsのよくある質問(FAQ)

Q1. このCDにザ・クラッシュの曲は入っていますか?

A. いいえ。ザ・クラッシュの演奏を収録したアルバムではありません。元ツアーDJのバリー・マイヤーズが選曲したジャマイカ音楽のコンピレーションです。

Q2. CDには本当に43曲入っていますか?

A. 英国Trojan盤TJDDD 218は、全43曲の2枚組として登録されています。購入時には規格品番と曲目一覧を照合してください。

Q3. レゲエ初心者でも楽しめますか?

A. 楽しめると思います。ただし、分かりやすいヒット曲だけを集めた入門盤ではありません。最初は『Johnny Reggae』『Moon Hop』『Book of Rules』などから聴き始めてもいいでしょう。

Q4. リマスター盤は発売されていますか?

A. 今回確認した範囲では、本作全体の新規リマスターを明示した正規CD再発盤は確認できていません。販売ページの「リマスター」という表示だけで判断せず、発売年・レーベル・規格品番を確かめてください。

Q5. DJスクラッチーとリー・スクラッチ・ペリーは同じ人物ですか?

A. 別人です。前者は英国のDJバリー・マイヤーズ。後者はジャマイカのプロデューサー/音楽家リー・ペリーです。本作にはリー・ペリーの作品も収録されています。

4-7. まとめ|クラッシュの音楽をもう一歩先へ

クラッシュを聴いてからこちらへ進んでもいいし、逆にこのCDを聴いたあとでクラッシュへ戻ってもいい。

『Scratchy Sounds』は、単なるレゲエの有名曲集ではありません。

クラッシュのツアーDJを務めた男が、ジャマイカ音楽の中から自分の好きな43曲を選び、2枚のCDに収めた作品です。

クラッシュを聴いてからこちらへ進んでもいいし、逆にこのCDを聴いたあとでクラッシュへ戻ってもいい。

そして気に入ったなら、英国Trojan盤の「TJDDD 218」を探す。

有名な曲を知っていることより、その曲の向こう側にどんな音楽があるかを知る方が、ロックを聴く楽しみは広がると思うんです。

熱は、まだ終わらない。

暗いDJブースでヘッドフォンを着けた白髪の男性がミキサーに手を伸ばす白黒のイメージ画像。「熱は、まだ終わらない。」の白い文字と音楽の広がりを示す橙色の一文がある。
『Scratchy Sounds』を聴いた後にクラッシュへ戻れば、知っている曲にも新しい発見がある。

4-8. 主な確認資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

はじめまして!
\ ブログ「ジェネレーションB」管理人の「TAKU」です /
今年で還暦を迎える50代後半、ブロガーとして活動しています。
これまでの人生で培ってきた情熱をベースに、大人が本気で熱中できる2つのテーマに絞って情報を発信中です。

◆メインテーマ

🎸 ROCK & BAND
ローリング・ストーンズなどのクラシックロックやパンクの話題を中心に。自身のロックバンド「Junky Merry」でのボーカル・作曲活動や、Suno AIなどを活用した現代ならではの音楽制作の裏側もお届けします。

🥊 BOXING
プロボクシングの熱狂的な観戦記!井上尚弥選手をはじめとするトップボクサーの動向や、パウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングを追う独自の考察を発信しています。
「年齢を重ねても、人生はもっと面白くなる」
読者の皆さんが、心から熱狂できる何かを見つけるキッカケになれば嬉しいです。
ロックやボクシングの趣味が近い方、ぜひ気軽に読んでいってください。
ブログやXでの交流も大歓迎です!

目次