こんにちは、ジェネレーションBのTAKUです。
The B-52’sの名前は知っている。「Rock Lobster」も聴いたことがある。
でも、1979年のデビューアルバム『The B-52’s』を最初から最後まで通して聴いたことはない。
そんな人は意外と多いんじゃないでしょうか。
この1枚を「変な髪型のニューウェイヴ・バンドが出した、妙に陽気なアルバム」で片付けるのは、かなりもったいないです。
ここにはサーフロック、ガレージ、パンク以後の切迫感、古いSF映画のようなレトロな感覚、ダンス音楽の反復、そしてフレッド・シュナイダー、ケイト・ピアソン、シンディ・ウィルソンという3人の声がぶつかる面白さが、すでに出来上がっています。
しかも、これは何もないところから突然生まれた完成形ではありません。
The B-52’sは1976年にジョージア州アセンズで結成され、ライブ活動を重ね、1978年には「Rock Lobster」を自主レーベルからシングルとして発表していました。
つまり1979年の1stは、数年間の現場経験と試行錯誤をスタジオで一気に定着させた作品なんです。
今回は全9曲を曲順どおりに追いながら、独特のギター、ベースレスの編成、3人のボーカル、そして今から聴くならどんな入り方がいいのかまで、じっくり書いていきます。
この記事でわかること
- 『The B-52’s』がデビュー作とは思えないほど完成している理由
- 変則チューニングとキーボードベースが生む独特のリズム
- 「Rock Lobster」を含む全9曲それぞれの聴きどころ
- 配信、CD、アナログ盤を選ぶときのポイント
1. 『The B-52’s』はどんな作品か
まずはこの黄色いジャケットのアルバムが、どんな経緯で作られた作品なのか。
発売年だけでなく、その前にThe B-52’sが何をしていたのかを知ると、「デビュー盤なのに完成している」理由が見えてきます。
1-1. ライブで磨かれてから生まれた1st

『The B-52’s』は1979年7月6日に発表されたThe B-52’sのデビューアルバムです。
録音は1979年3月から4月にかけて、バハマ・ナッソーのCompass Point Studiosで行われ、プロデュースはクリス・ブラックウェル。
全9曲、収録時間は39分14秒です。
メンバーはフレッド・シュナイダー、ケイト・ピアソン、シンディ・ウィルソン、リッキー・ウィルソン、キース・ストリックランドの5人。
1976年にジョージア州アセンズで結成され、地元だけでなくニューヨークにも進出し、CBGBやMax’s Kansas Cityといったクラブで評判を広げていきました。
だから「1979年に突然変なバンドが現れた」というより、アセンズとニューヨークのライブ現場で自分たちの型を作った末に、アルバムとして世に出たと考えるほうが実態に近いです。
さらに重要なのが、「Rock Lobster」と「52 Girls」です。
この2曲は1stアルバムで初めて録音された曲ではありません。
「Rock Lobster」は1978年4月にDB Recordsからシングルとして先に発表されており、アルバムではCompass Point Studiosで改めて録音されています。
「52 Girls」も同じく再録音です。
これは「デビュー盤なのに完成度が高い」という話をむしろ補強します。
ライブで演奏し、自主制作で一度形にし、そのうえで本格的なアルバム録音へ持ち込んだ。
最初から偶然うまくいったわけではなかったんですね。
The B-52’sを1枚で理解したいなら、私はまずこのデビュー作をすすめます。
後年の『Cosmic Thing』のほうがポップで入りやすいですが、このバンドにしかない異様な発想が、いちばん裸の状態で聞こえるのは1stです。
ここまで読んで「まず音を確かめてみたい」と思った方は、デビュー作『The B-52’s』から入れば間違いありません。
CDでもアナログでも、収録されている9曲そのものは同じなので、普段の聴き方に合わせて選んでください。
ニューウェイヴの原点、アナログで。
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1-2. 商業的にも一発屋ではなかった
奇抜な音楽なので、当時は一部のマニアだけが面白がった作品のように思えるかもしれません。
しかし『The B-52’s』は米Billboard 200で59位まで上昇し、アメリカではプラチナ認定を受けています。
「Rock Lobster」もBillboard Hot 100で56位を記録しました。
爆発的な全米1位アルバムではありません。
それでも、これほど癖の強いデビュー作が広い層へ届いたこと自体が面白い。
奇抜な外見だけではなく、踊れること、フックが強いこと、何より一度聴けば忘れられないことが大きかったのでしょう。
2020年にはローリング・ストーン誌の「500 Greatest Albums」でも198位に選ばれています。
ただし、こうした評価があるから名盤なのではありません。
40年以上たっても同じようなバンドがほとんど出てこない。
その事実のほうが、この作品の特殊さをよく物語っています。
2. 普通ではない編成が音を決めた
The B-52’sの曲がなぜ一聴して分かるのか。
その答えは、服装や歌い方だけではありません。
一般的なロックバンドとは少し違う楽器の配置そのものが、あの独特の隙間を作っています。
2-1. 専任ベーシストがいない

初期The B-52’sには専任のベーシストがいません。
基本的な低音部を担ったのはケイト・ピアソンのキーボードベースです。
そこへリッキー・ウィルソンのギターが絡み、キース・ストリックランドのドラムが反復を支えています。
ただし「低音は全部ケイト」という単純な編成でもありません。
アルバムのクレジットでは、フレッド・シュナイダーも「Hero Worship」でキーボードベースを担当し、ケイトは一部の曲で追加ギターも弾いています。
「There’s a Moon in the Sky」ではシンディ・ウィルソンも追加ギターを担当しました。
つまり固定された「ギター、ベース、ドラム」という役割分担ではなく、必要に応じて楽器を持ち替えている。
その柔軟さも、このバンドらしいところです。
それでも全体を通して感じるのは、一般的なロックのようにエレクトリックベースが中央に太い柱を立てていないこと。
低音、ギター、ドラム、声の間に空白があり、その空白そのものがグルーヴになっているんです。
2-2. リッキーのギターは普通ではない

リッキー・ウィルソンのギターは、このアルバム最大の特徴の一つです。
彼は独自のオープンチューニングを使い、さらにギターの弦そのものを通常の6本から減らすこともありました。
中央の弦を外した特殊な状態で演奏し、曲ごとに違うチューニングを使う。
例えば「Rock Lobster」ではCFxxFF、「Lava」などではDADxBBといった独特の設定が知られています。
難しい理屈を抜きにして聴いても、普通のコードストロークと感触が違うのは分かるはずです。
低い弦を刻んだと思ったら、高いところから鋭い音が返ってくる。
一本のギターなのに、別々の楽器が会話しているように聞こえる瞬間があります。
しかも速弾きで圧倒するタイプではありません。
短い音を置き、止め、また鳴らす。
サーフロックから受け継いだ響きはありますが、それを1970年代末のパンク/ニューウェイヴの削ぎ落とされた感覚へ持ち込んでいる。
これが他のバンドにはないんですよ。
このギターの奇妙さは、文章で読むより実際に「Planet Claire」や「Rock Lobster」を聴くと一発で分かります。
まだ音源を持っていない方は、配信またはデビュー盤で一度確認してみてください。
2-3. 3人の声も楽器になっている

もう一つの柱がフレッド、ケイト、シンディの3人のボーカルです。
一般的な「リードボーカル一人+コーラス二人」という関係ではありません。
誰かが主役になったと思ったら、別の声が横から割り込む。
語る、叫ぶ、返す、笑うように声を出す。
ときには言葉の意味以上に、声の響きそのものを曲へ置いていきます。
歌い手の耳で聴くと、フレッドは上手く歌おうとしていないことが強みです。
音程を美しく運ぶより、言葉をビートへ打ち込む。
ケイトは高い帯域が鋭く抜ける。
一方のシンディには、息の混じった柔らかさと突然荒くなる瞬間がある。
この3人を均一に混ぜない。
声質の違いを消さず、そのままぶつけている。
だから同じフレーズを反復しても飽きないんです。
◆TAKUのひとこと
3. なぜ今聴いても古く感じないのか
この作品はニューウェイヴとして語られることが多いですが、それだけでは十分ではありません。
古いものを否定して捨てるのではなく、古い音楽を好き勝手に組み替えて未来へ放り投げたような作品だからです。
3-1. サーフとパンクが同居する

リッキーの乾いたギターには、1960年代のサーフやインストロックにつながる響きがあります。
その一方、演奏は豪華に飾られず、短いフレーズを執拗に繰り返す。
この削ぎ落とし方には、1970年代後半のパンク以後の空気がある。
ただし、The B-52’sは怒りだけを前面に出すバンドではありません。
ビーハイブヘア、古着、宇宙、海辺、架空の生物、昔のポップカルチャー。
そうしたものを音楽へ放り込み、「世の中がつまらないなら、自分たちで変な場所を作って踊ればいい」とでも言うような世界を作りました。
パンク、ニューウェイヴ、サーフ、ガレージ。
どの棚に入れても少しはみ出す。
そのはみ出し方こそThe B-52’sです。
3-2. 音数の少なさが武器になる

Compass Point Studiosでの録音は、演奏を巨大に見せる方向ではありません。
むしろ各楽器の入りと止まりが分かるくらい、空間があります。
今のロックに慣れた耳だと、低域の量感や音圧が物足りなく感じる可能性はあります。
しかし、このアルバムを現代的に分厚くすれば必ず良くなるとは私は思いません。
隙間があるから、リッキーのギターの変な響きも、3人の声の違いも見える。
全部を埋めない勇気。
これは録音から半世紀近く経った今でも、かなり格好いいです。
4. 『The B-52’s』全9曲を聴く

ここからは収録順に全9曲を追います。
「Rock Lobster」だけ拾って終わるより、A面とB面を通して聴くほうが、このバンドが最初から一発屋ではなかったことがはっきり分かります。
4-1. Planet Claire
1曲目から、いきなり普通ではありません。
冒頭で聞こえるのは「モールス信号のような音」ではなく、実際のモールス信号です。
カナダ・ノヴァスコシア州にあった軍用通信局の呼び出しテープに由来するとされています。
そこから低く反復するフレーズが始まり、古いSFとサーフロックを混ぜたような世界へ入っていく。
さらに重要なのが、ヘンリー・マンシーニの「Peter Gunn」との関係です。
単に「思わせる」程度ではありません。
「Planet Claire」は「Peter Gunn」の有名な反復フレーズを非常に直接的に下敷きにしており、マンシーニにも作曲クレジットが与えられています。
デュアン・エディによるギター中心の「Peter Gunn」を思い浮かべると、The B-52’sが何を持ち込んだのかが分かりやすいでしょう。
ただし、借りて終わりではない。
そこへモールス信号、電子的なキーボード、フレッドの無表情な声、女性陣の声を加えることで、完全に別の景色へ変えています。
私は「Rock Lobster」以上に、この1曲目にThe B-52’sの方法が凝縮されていると思います。
昔の素材なのに未来に聞こえる。
安っぽさを隠さないのに、狙いは細かい。
アルバムの入口として最高です。
4-2. 52 Girls
「52 Girls」は、1曲目から一転してぐっと直線的になります。
そして先ほど触れたように、これはアルバムで初めて世に出た曲ではなく、以前に録音されていた曲を改めて録り直したものです。
短いギターフレーズと前へ進むドラム、その上にケイトとシンディの声が乗る。
二人の声質は同じではありません。
ケイトは高いところへ鋭く抜け、シンディはもう少し生々しい。
その違いを残したまま重ねるので、整った合唱というより、何人もの人が一斉に声を上げている感じになります。
曲そのものはシンプル。
それでも耳へ引っかかるのは、メロディだけではなく人間の声そのものをフックとして使っているからでしょう。
4-3. Dance This Mess Around
この曲ではシンディ・ウィルソンのボーカルを聴いてほしいです。
冒頭では少し温度の低い、息を含んだ声。
それが曲が進むにつれてどんどん感情を帯びていく。
声の表面をきれいに磨いていないから、言葉の意味より先に感情が飛んできます。
途中からはさまざまなダンスを呼び起こすパーティー感へ向かいますが、単純に陽気なだけではありません。
どこか投げやりで、少しヒステリックで、それでも踊る。
その危なっかしさがいい。
The B-52’sのパーティーは、健康的なレクリエーションとは少し違います。
日常の決まりから外へ出るための場所。
その感覚が、この曲にはかなり濃く出ています。
4-4. Rock Lobster
そしてA面最後の「Rock Lobster」。
アルバム版は6分49秒あります。
この曲は1978年4月にDB Recordsから先にシングルとして発表されており、1st収録版はバハマで録音し直したものです。
つまりThe B-52’sは、この代表曲をすでにライブと自主制作の段階で育てていました。
だからアルバムの流れで聴くと、「ここだけ突然おかしくなった」のではないことがよく分かります。
「Planet Claire」で見せた反復、「52 Girls」の声、「Dance This Mess Around」の暴走。
それまでの要素が全部大きくなって、この曲へ集まってくる。
リッキーのギターは低い刻みと高い返しが別々に動き、一本の楽器なのに複数の線があるように聞こえます。
そこへドラム、キーボードベース、フレッドの語り、ケイトとシンディの声が積み上がっていく。
特に終盤。
女性陣の声は「歌」からどんどん離れていきます。
普通なら避けるような声を、The B-52’sは音楽の主役へ持ってくる。
笑えるのに、バックの演奏は本気。
ここが大事です。
「Rock Lobster」は一発芸ではありません。
サーフ的なギター、反復、語り、男女の掛け合い、奇声、ダンスビートという1st全体の特徴を約7分に拡大した曲です。
単体で聴くより、A面の最後まで来てから聴くとさらに効きます。
「Rock Lobster」だけを単曲で聴くより、「Planet Claire」からA面を順番に聴くと、この曲へたどり着く意味がかなり変わります。
気に入った方には、ベスト盤ではなく9曲入りの1stそのものをおすすめします。
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4-5. Lava
B面1曲目の「Lava」は、「Rock Lobster」の後でも勢いを失いません。
短いフレーズを繰り返しながら、声が次々に絡む。
リッキーのギターもコードを厚く鳴らすというより、リズムの隙間へ入り込んでくる。
タイトルどおり、地下から何かがじわじわ湧き上がるような粘りがあります。
代表曲として真っ先に名前が出るタイプではありません。
でも私は、こういうアルバム中盤の曲が弱くない作品は信用できます。
「Rock Lobster」のために他の曲があるのではない。どこを切っても同じバンドの匂いがする。
それがデビュー作の強さです。
4-6. There’s a Moon in the Sky
「There’s a Moon in the Sky (Called the Moon)」では、The B-52’sの宇宙趣味が再び前へ出ます。
ただし、重々しいスペースロックではありません。
明るく、軽く、少しチープ。未来を本物らしく描くのではなく、昔の人が想像した未来を楽しんでいるような音です。
フレッドが語るように進め、その周囲へケイトとシンディの声が入る。
さらにこの曲ではシンディが追加ギターも担当しています。
固定された役割より「この曲に何が必要か」を優先する。
その柔らかさも、The B-52’sのDIY的な面白さでしょう。
4-7. Hero Worship
「Hero Worship」は、このアルバムの中でも特に荒いロックの芯が見える曲です。
シンディの声はかなり強く、ざらつきが前へ出る。
かわいいレトロ趣味だけでThe B-52’sを見ていた人なら、ここで印象が変わるかもしれません。
ずっと叫ぶのではなく、抑えるところがあるから爆発する。
歌い手として聴くなら、その強弱が面白いです。
また、この曲ではフレッドがキーボードベースを担当しています。
初期The B-52’sの低音を「ケイト一人の仕事」と考えると、このあたりを見落としてしまいます。
演奏も声も役割が少しずつ入れ替わる。
その不安定さが、逆にバンド全体を生き物のようにしています。
4-8. 6060-842
「6060-842」は、電話番号をモチーフにした短く神経質な曲です。
ギターは大きなコードを鳴らすより、短い音でリズムへ切れ込む。
声はせわしなく動き、ドラムはその後ろで一定の反復を守る。
ベスト盤だけでThe B-52’sを聴くと落としやすい曲でしょう。
でも、こういう小さな曲まで含めて聴くと、アルバムのテンポ設計がよく見えます。
有名曲と有名曲の間を埋めるだけではありません。
短い曲でも、やっぱりThe B-52’sなんです。
4-9. Downtown

最後の「Downtown」は、ペチュラ・クラークの大ヒットで知られる曲のカバーです。
原曲はトニー・ハッチが書き、1964年に録音され、アメリカでもBillboard Hot 100の1位を獲得しました。
一見すると、こんな変なバンドがなぜこの有名なポップソングを?と思います。
ところが聴いてみると、選曲の理由が分かる気がします。
The B-52’sは過去のポップ文化を嫌っていたのではなく、大好きだった。
だから博物館のように丁寧に保存するのではなく、自分たちの服を着せてしまう。
原曲を忠実に再現する気はありません。
少し変な照明を当て、The B-52’sの世界へ引きずり込む。
彼らのレトロ趣味は懐古ではなく、再利用なんですよ。
5. 歌い手として面白い3人の声
全曲を聴き終えたあと、もう一度ボーカルだけ意識して聴くと、このバンドの特殊さがさらに見えてきます。
3人の歌手がいるというより、3種類の音色を編曲に使っているんです。
5-1. フレッドは音程よりリズム
フレッド・シュナイダーは、一般的な意味で美しいメロディを歌い上げるフロントマンではありません。
語る。
突然強く言う。
少し間を空ける。
言葉の尻を変なところへ置く。
声をドラムやパーカッションのように使っています。
だから「Planet Claire」や「Rock Lobster」では、フレッドの声が入った瞬間に風景が変わる。
声量よりタイミング。音域より人格です。
こういう歌は簡単そうで、実は真似しにくい。
ただ変な声を出しても、ビートへ入らなければ格好よくならないんですよ。
5-2. ケイトとシンディは混ざりきらない
ケイトとシンディを「女性コーラス」と一括りにすると、このバンドの魅力をかなり失います。
ケイトは高いところへ鋭く伸びる。
シンディはもう少し息やざらつきを残す。
二人が一緒に歌っても完全に同じ声にはならない。
普通のコーラスなら、音程や発音をそろえ、二人を一本の太い声にしたくなるところです。
でもThe B-52’sは違う。
違う人間が同時に声を出している感じを、そのまま残す。
そこへフレッドまで入れば、歌ではなく会話や口論に近くなる。
この「そろえすぎない」感覚が、1stを何度聴いても面白くしています。
6. 今から聴くならどうするか
ここまで読んで気になった人にとって、次の問題は「どう聴けばいいか」です。
サブスク、CD、アナログ、さらに2025年には大規模なボックスセットも登場しました。
ただ、最初から高価な盤を買う必要はありません。
6-1. まず全9曲を曲順どおりに聴く

最初は、利用している音楽配信サービスで『The B-52’s』を検索し、配信されている場合は曲順どおりに全9曲を通して聴くのがおすすめです。
配信状況やアルバム名の表記は地域や時期によって変わるため、最新情報は各サービスの公式画面で確認してください。
そして、できればシャッフルはしない。
「Planet Claire」から始まり、「Rock Lobster」でA面を締め、「Lava」からB面に入り「Downtown」で終わる。
この順番がいいんです。
ヒット曲だけを抜き出したプレイリストでは、このアルバムの変な起伏までは分かりません。
6-2. 2025年のボックスは上級者向け
2025年6月20日にはRhinoから『The Warner and Reprise Years』が発売されています。
内容は9LPまたは8CD。
1979年から1992年までのスタジオ作品を中心に、『Party Mix!』『Mesopotamia』も収録したセットで、デビュー作も新規リマスターされています。
後年の『Funplex』は収録対象外です。
LP版ではデビュー作が黄色いレコードとして収録され、2,000セット限定でRhino.com限定販売とされました。
一方、CD版は一般流通しています。
ただし、これは明らかに「まずThe B-52’sを聴いてみたい」という人向けの商品ではありません。
1stだけ気になるなら単体のCDやアナログ盤で十分です。
作品を何枚も好きになり、バンドの1979〜1992年をまとめて持ちたいと思ってから考えればいいでしょう。
一方、1stだけで終わらず『Wild Planet』『Cosmic Thing』までまとめて追いたい方には、こちらのほうが結果的に分かりやすい選択です。
ワーナー/リプリーズ期を、まとめて一気に。
【輸入盤CD】【新品】B-52’S / WARNER REPRISE YEARS【2025/6/20発売】
B-52’sがワーナー/リプリーズに残した音源をまとめた輸入盤8枚組CDセット。名盤を一枚ずつ買い集めなくても、この時期の流れをそのまま追えます。
※価格・在庫は変動します。最新情報は各販売ページでご確認ください。
中古盤や限定盤を高値で焦って買う必要はありません。 新品価格、中古相場、在庫、限定盤の流通状況、再発予定は変動します。この記事の情報は執筆時点のものであり、購入前にはRhinoなどの公式サイトや販売店で最新情報を確認してください。
6-3. オリジナル盤が絶対ではない
アナログ好きなら初期盤にも興味が出てくると思います。
でも「オリジナル盤だから必ず音がいい」「再発だから劣る」という単純な話ではありません。
どのマスターを使ったのか、どうカッティングされたのか、プレスの状態はどうか。
さらに中古なら盤そのものの状態もあります。
リマスター、リミックス、リイシュー、再プレスも全部別物です。
まず作品を好きになる。
そのあと「このアルバムを別の音でも聴いてみたい」と思ったときに初期盤へ進む。それで十分ですよ。
7. このアルバムが合う人
名盤と呼ばれる作品でも、全員に合うわけではありません。
『The B-52’s』は個性が強いぶん、好き嫌いもかなり分かれると思います。
7-1. 変なロックが好きなら強い
サーフ、ガレージ、パンク、ニューウェイヴ、古いポップス、B級SF、ダンス音楽。
このあたりが二つ三つでも好きなら、かなり楽しめるでしょう。
特に「演奏が上手いバンド」より、「この人たちにしか出せない音がするバンド」に弱い人。
そんな人には刺さる可能性が高いです。
ボーカル一人がバンドの顔になる作品に飽きた人にも面白い。
3人の声が次々に主役を奪うので、40分の中で何度も表情が変わります。
7-2. 整った音が好きなら合わないかも
逆に、太いベースが中央を支え、ギターが厚く重なり、ボーカルが大きく中央へ立つ音が好きな人には、最初はスカスカして聞こえるかもしれません。
奇声やコミカルな声が苦手なら「Rock Lobster」の後半はかなりきついでしょう。
そこは名盤だからと無理に好きになる必要はありません。
ただし、「Rock Lobster」1曲だけで決めるのは少しもったいない。
私は最低でも「Planet Claire」「Dance This Mess Around」「Rock Lobster」の3曲を聴いてみてほしいです。
そこで何も引っかからなければ、おそらく相性の問題でしょう。
8. 『The B-52’s』のよくある質問(FAQ)
The B-52’sのデビュー盤を初めて聴く人が気になりやすいところを、最後にまとめます。
Q1. 『The B-52’s』は本当にファーストアルバムですか?
A. はい。1979年7月6日に発売されたデビューアルバムです。ただしバンド自体は1976年から活動しており、「Rock Lobster」は1978年にシングルとして先に発表されています。そのため、何もない状態から突然完成した作品というより、数年間のライブと自主制作を経て作られた1stです。
Q2. 「yellow album」は別のアルバムですか?
A. 一般に「yellow album」と呼ばれているものは、黄色いジャケットで知られるセルフタイトルのデビュー作『The B-52’s』を指すことが多いです。正式な作品名は『The B-52’s』なので、購入するときはタイトルと収録曲を確認してください。
Q3. 「Planet Claire」は「Peter Gunn」を引用しているのですか?
A. はい。単に似ているというレベルではなく、「Peter Gunn」の有名な反復フレーズを明確に下敷きにしており、ヘンリー・マンシーニにも作曲クレジットが与えられています。そこへモールス信号やキーボード、The B-52’s独自のボーカルを加え、まったく違う曲へ変えています。
Q4. 1stと『Cosmic Thing』ならどちらから聴くべきですか?
A. The B-52’sの異形のニューウェイヴ感を知りたいなら1st、よりポップで入りやすい代表曲から聴きたいなら『Cosmic Thing』です。私なら「このバンドの何が普通ではないのか」を最短で知るために、まず1stをすすめます。
Q5. オリジナル盤を買う価値はありますか?
A. 当時のプレスやカッティングを聴き比べたい人、コレクションしたい人には価値があります。ただ、初めて聴く人が高価な初期盤から入る必要はありません。配信、CD、再発盤などで作品を好きになってから探すほうが失敗しにくいですよ。
9. まとめ
『The B-52’s』は、「Rock Lobster」が入った変なデビュー盤ではありません。
1976年の結成からライブを重ね、1978年には自主シングルを出し、その経験を持って1979年のCompass Point Studiosへ入った。
だから1stなのに、すでにバンドのやり方が固まっていたんです。
専任ベーシストを置かない編成。
ケイトらによるキーボードベース。
リッキー・ウィルソンの弦を減らしたギターと独自のオープンチューニング。
キース・ストリックランドの反復するドラム。
そしてフレッド、ケイト、シンディの3人が主役を奪い合うような声。
「Planet Claire」ではヘンリー・マンシーニの「Peter Gunn」を大胆に引用し、「Rock Lobster」ではサーフギター、ナンセンス、反復、奇声を約7分のダンス音楽へ変えてしまう。
最後にはペチュラ・クラークで知られる「Downtown」まで自分たちの世界へ持ち込む。
古いものを捨てて新しく見せたのではありません。
古いものが好きだからこそ、原型が崩れるまで自分たち流に遊んだ。
そこがThe B-52’sの面白さです。
今から入るなら、まず全9曲を曲順どおりに聴いてみてください。
気に入ったらCDや単体の再発アナログ盤へ進む。
オリジナル盤や2025年の『The Warner and Reprise Years』のような大きなボックスは、そのあとで十分です。
そして一度聴くなら「Rock Lobster」だけで止めないでください。
「Planet Claire」の奇妙な未来感。「Dance This Mess Around」で感情をむき出しにするシンディ。
「Hero Worship」の荒さ。
そして最後の「Downtown」。
そこまで通して聴くと、The B-52’sが単なるパーティーバンドではなく、ロックの普通の形を、楽しそうに、しかもかなり大胆に組み替えたバンドだったことが見えてきます。




