【決定版】P.I.L徹底解説:ポストパンクの革新者が残した代表曲と2025年最新ツアー情報

「黒背景にP.I.L徹底解説という文字と、ポストパンク風の人物が照明に照らされて写っているデザイン画像」

こんにちは。ジェネレーションB、運営者の「TAKU」です。

「PIL バンド」と検索すると、多くの情報が出てきますよね。

セックス・ピストルズのボーカル、ジョン・ライドンが始めたバンドだということは知っていても、彼らが「ポストパンク」というジャンルにどれほどの影響を与えたのか、ジャー・ウォブルやキース・レヴィンといった初期メンバーがどうすごかったのか、具体的な名曲や代表曲はどれ?といった疑問が湧いてくるかもしれません。

ポストパンクって、そもそもパンクと何が違うの?とか、初期のサウンドがどうしてそんなに革命的だったの?とか、疑問は尽きないかも知れません。

私自身、彼らの音楽の変遷や、U2など後世のバンドへの影響を知ったときは、その奥深さに本当に驚きました。ただのパンクの続きじゃなかったんだ、と。

最近では2025年の最新ツアー情報 も発表され、その活動は現在進行形です。ジョン・ライドン個人の悲劇を乗り越えて 、今なおステージに立ち続ける姿には、胸を打つものがあります。

この記事では、「PIL バンド」の核心的な魅力について、その結成背景から革命的な音楽性、外せない名曲、そして最新の動向まで、網羅的に掘り下げていきますね。

  • PILが「ポストパンクの先駆者」と呼ばれる理由
  • バンドサウンドを決定づけた主要メンバーの役割
  • 聴くべき代表曲と名盤アルバムの変遷
  • 2025年の最新ツアースケジュールと活動状況
目次

1. Public Image Ltd. (PiL) とはどんなバンド?

まずは「PIL バンド」の基本的な情報からおさらいしましょう。

彼らは単なるパンクの延長ではなく、全く新しい概念を持ち込んだバンドでした。パンクが「NO」を突きつけた後、じゃあ何をするか?という「問い」そのものを音楽にしたような存在、それがPiLだと私は思っています。

1-1. ジョン・ライドンが結成した「ポストパンク」の先駆者

赤と黒の荒々しいコラージュに「POST PUNK」の大きな文字が重なったグラフィック。金属質の質感とノイズが混沌を表現。
ジェネレーションB イメージ

Public Image Ltd.(パブリック・イメージ・リミテッド)、通称「PiL」は、セックス・ピストルズの元ボーカリスト、ジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)が1978年に結成したバンドです 。

ピストルズが1978年に衝撃的なアメリカツアーの末に崩壊・解散した後、ライドンは「ジョニー・ロットン」という世間が作ったペルソナ、あるいはマネージャーのマルコム・マクラーレンによって搾取されたイメージ を捨て、本名であるジョン・ライドンへと回帰します 。

そして結成されたPiLは、ピストルズのような3コードのパンクロックとは音楽的にも哲学的にも完全に決別しました。

彼らこそが「ポストパンク」という新しいジャンルを定義づけた、歴史的にめちゃくちゃ重要なバンドなんですね 。

1-2. バンド名「Public Image Ltd.」に込められた意味

赤と黒を基調とした荒々しいコラージュの中に、人物のシルエットや破れたポスター、部分的な文字片が重なり合い、「Public Image」という概念の分裂と再構築を表現した抽象アート。
ジェネレーションB イメージ

このバンド名、面白いですよね。

「Public Image(大衆が抱くイメージ)」は、スコットランドの小説家ミュリエル・スパークが1968年に発表した小説『The Public Image』(邦題:うわべ)から取られています 。

ライドン自身が「ジョニー・ロットン」として消費された「虚像」を皮肉っているわけです。

ですが、本当に重要なのは最後の「Ltd.(リミテッド=有限会社)」です。

これは、ピストルズ時代にマネージャーに自らの「パブリック・イメージ」を無制限に搾取された経験から、「今後は自分たちのイメージ(=作品)を、自分たちで厳格に管理(リミテッド)するぞ」という強い意志表示なんです 。

アーティスト自身がCEO

PiLは単なるバンドではなく、「バンドであると同時に会社でもある」という哲学でスタートしました 。これはセルフマネジメントによる芸術的・経済的自立の宣言であり、音楽的な実験を続けるための「事業体」を持つという、現代でいう「アーティスト自身がCEO(最高経営責任者)」になるという概念の先駆けとも言えるかもしれません。

1-3. 音楽性:パンクの「次」を定義したサウンド

赤い波形が中心に走り、黒い煙や抽象的な幾何形状が広がる中で、ダブ特有の重い低音と空間的な響きを視覚化した抽象アート作品。
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PiLはパンクの「続き」ではありませんでした。

むしろパンクの象徴だったライドン自身による「アンチ・ロック」、「パンクの解体」作業だったんです。

具体的には、従来のロックンロールを構成していたR&Bやカントリーの要素、あるいは決まった曲構成(Aメロ→Bメロ→サビみたいな)を意図的に排除しました。

その代わりにファンクやレゲエ、特にダブの重いグルーヴを音楽的基盤として採用したんです 。

当時のロックシーンで、レゲエやダブのベースラインをここまで大胆に中心に据えたバンドは、ほぼ皆無でした。

彼らは「ルールがないこと」を唯一のルールとし 、意図的に自由形式(フリー・フォーム)な演奏を追求しました 。

この革新的なアプローチこそが、PiLをポストパンクの先駆者たらしめる所以ですね。

2. PiLサウンドを設計した主要メンバー

初期PiLの革新的なサウンドは、偶然生まれたものではありません。

ライドンの「カオス」の哲学 、レヴィンの「脱構築」、ウォブルの「原始的グルーヴ」。

この3人が揃ったことが奇跡であり、必然だったと私は思います。特に重要な3人を紹介しますね。

2-1. ジョン・ライドン (John Lydon) – ボーカルと哲学

赤と黒の荒々しいテクスチャの中で、目を閉じて叫ぶような表情の人物像がコラージュされ、声のエネルギーや混沌を象徴的に描いたアートワーク。
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ピストルズ時代の扇動的な「叫び」のスタイルとは異なり、PiLではより内省的で、呪術的とも言えるような実験的なボーカルスタイルを聴かせます。

彼の哲学は「音楽よりカオス(混沌)に入り込んでいる」 という言葉に象徴されます。

決まったメロディを追うのではなく、サウンドの隙間を縫うように言葉を配置していくスタイルは、非常に独特でした。

歌詞も極めてパーソナルな領域に踏み込みました。

ピストルズ時代の苦悩と訣別を歌ったデビュー曲「Public Image」 や、癌で亡くなる実母の最期を客観的かつ冷徹に描写した「Death Disco」 など、PiLの楽曲はライドン個人の内面と深く結びついています。

2-2. キース・レヴィン (Keith Levene) – ギター

白いエレキギターと赤・黒・灰色の鋭い幾何学模様が重なり合い、ノイズ感のある質感でポストパンク特有のメタリックかつ尖ったサウンドを象徴的に描いたアートワーク。
ジェネレーションB イメージ

PiLのサウンドを定義づけた 天才ギタリストです。

彼のキャリアは本当に興味深くて、実は彼、ザ・クラッシュ (The Clash) の創設メンバーだったんです 。

ミック・ジョーンズらと共にクラッシュを結成し、ジョー・ストラマーをバンドに誘い入れたのも彼でした 。

しかし、レヴィンはクラッシュの音楽性が自身に合わないと感じ、デビューアルバムのレコーディング前に脱退してしまいます 。

もし彼がクラッシュに残っていたら、ロック史は大きく変わっていたかもしれません。

クラッシュはロックンロールと融合した「アンセム・パンク」の象徴となり、一方レヴィンはPiLで「ポストパンク」のサウンドを創造し、U2やレディオヘッドといった全く異なる系譜を生み出すことになります 。

独自の「メタリック」な奏法

レヴィンのギター奏法は「ユニークな『メタリック』な奏法」と評されます 。そのサウンドは「メロディックでありながら不協和音」「響き渡ると同時に暴力的」 と表現され、従来のロックギターの常套句(ブルーススケールやパワーコード)を意図的に拒否しました。「ルールを知るに十分なほど上達したら、他のギタリストのようになりたくなかった」 と語っている通り、アルミ製のギター(Travis Bean)を使用するなど、機材面からもその金属的できらびやかな 、あるいは「もろいジャングル(jangle)」 とも評される独特のサウンドを生み出しました。この革新的なギターこそが、PiLサウンドの核となりました 。

2-3. ジャー・ウォブル (Jah Wobble) – ベース

赤と黒を基調にした抽象的な図形や円形の波紋が重なり、中央には質感の荒い顔のシルエットが配置され、ダブ特有の重低音のうねりと圧力を象徴的に描いたアートワーク。
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PiLの「反音楽的」なアプローチを最も象徴しているのが、ベースのジャー・ウォブルです。

彼はジョン・ライドンの古くからの友人で、なんとバンド加入時はベースが全く弾けなかったそうです 。

「喧嘩が強いから」という理由でバンドに加入したという説もあるくらいです 。

ベースに慣れていなかったため、「座って弾いていた」とされ、ネックには音階が書いてあったという逸話も残っています 。

しかし、この音楽的「素人」であったことが、PiLにとって最大の武器となりました。

技術(ルール)を知らないがゆえに、ウォブルは既存のロックのベースラインに囚われず、彼が愛聴していたダブミュージックの根源的なグルーヴ、すなわち「レゲエの太い音」 と「叩きつけるような(Pounding)リズミック・ベース」 のみを抽出して演奏しました。

彼のベースはリズム隊に徹するのではなく、むしろ楽曲をリードする主役でした。

この地を這うような重低音と、キース・レヴィンの高度に脱構築されたメタリックなギターという、本来交わるはずのない二つの要素が融合したことこそが、PiLのサウンドを定義づけたのです 。

3. 聴くべき名盤は?主要アルバムの変遷

PiLはキャリアを通じて「カメレオン」のようにラインナップと音楽性を大きく変えていきます 。

特に押さえておきたい、キャリアの転換点となったアルバムをピックアップします。

3-1. 初期の金字塔:『メタル・ボックス』(Metal Box) (1979年)

PiLの実験主義が頂点に達した、バンドキャリアの最高傑作と広く見なされている作品です 。

実験的ロック、ダブ、アヴァンギャルドといったジャンルを融合させました 。

専門メディアからの評価は極めて高く、米音楽メディアPitchforkでは10点満点 を獲得。

AllMusicも5つ星(満点)を付け、「間違いなくPiLの頂点」「過去、現在、未来の何物にも似ていない」と絶賛しています 。

映画フィルム缶という「パッケージ」

このアルバムが「メタル・ボックス」と呼ばれるのは、文字通り、オリジナルのアナログ盤が銀色の映画フィルム缶(メタル・ボックス)に収められていたからです。中には12インチのレコードが3枚、バラバラに入っていました。これは音楽の聴き方(曲順や連続性)すらもリスナーに委ねるという、非常にコンセプチュアルな試みであり、音楽を単なる「商品」ではなく「体験」として提示するPiLの哲学が表れています。

3-2. 実験主義の極北:『フラワーズ・オブ・ロマンス』(The Flowers of Romance) (1981年)

ジャー・ウォブルが脱退した後、バンドが3人編成(ライドン、キース・レヴィン、マーティン・アトキンス)となってリリースされた4枚目のアルバムです。

このアルバムは、PiLの実験性が一つの極北に達した問題作として知られています。

最大の特徴は、ウォブルが抜けたことで、意図的に「ベースレス」のサウンドを構築した点です。

ベースの代わりにマーティン・アトキンスが叩き出すタムを多用したトライバルなドラムビートが全体を支配し、そこにレヴィンの神経質なギターやシンセ、ライドンの呪術的なボーカルが絡み合います。

音楽的には「珍妙なアラビア音楽のよう」 とも評されるほど、ロックの常識から完全に逸脱した、非常に前衛的でコンセプチュアルな内容です。

コマーシャリズム(商業主義)を徹底的に排除し、これ以上削ぎ落とせないところまでサウンドを解体してしまった、まさに「聴き手を選ぶ」アルバムですね。

3-3. 中期のヒット作:『アルバム』(Album) (1986年)

初期メンバーであるレヴィンとウォブルが脱退した後、PiLはライドンを中心とした流動的なプロジェクトへと変化します。

その中で生まれたのが、この『アルバム』です。

このタイトル自体が皮肉ですよね。

「物事の汎用化(generic-ization)」へのオマージュであり 、初期の「会社」としての哲学とは対極にある「商業主義」そのものを、あえて皮肉たっぷりに受け入れた作品と言えます。

プロデューサーにビル・ラズウェルを起用 。

参加メンバーがすごくて、なんと坂本龍一、スティーヴ・ヴァイ(ギター)、ジンジャー・ベイカー(ドラムス)といったスーパースターたちが名を連ねました 。

サウンドはハードかつクリーンで、80年代のメインストリームにも通じる音でありながら、ライドンの強烈なボーカルによってPiL以外の何物でもない作品になっています。

バンドを代表するヒット曲「Rise」もこのアルバムに収録されています 。

3-4. 最新作:『エンド・オブ・ワールド』(End of World) (2023年)

バンドの11枚目となる最新スタジオアルバムです。

このアルバムへの評価が、実にPiLらしいなと思います。

批評家の評価は「イライラするほど当たり外れがある」 、「キュレーターの卵(良い部分と悪い部分が混在)」 というものでした。

あるレビューでは「アルバムの半分はライドンのここ数十年で最高の仕事だが、残りの半分は練習室から出すべきではなかった」 とまで評されています。

しかし、この「一貫性のなさ」は失敗ではなく、ライドンが「天の邪鬼な反逆者 (arch contrarian)」 として健在であることの証明です。

結成時の「カオス」 や「ルールがない」 という哲学が、45年を経た最新作においても貫かれていることを示しています。

3-5. 歴史的事件:『ライブ・イン・ジャパン』(Live in Japan) (1983年)

PiLの歴史を語る上で、このライブアルバムも欠かせません。

これは1983年、中野サンプラザで行われたPiLの熱狂的な初来日公演を収録したものです。

この時期、キース・レヴィンもバンドを去っており、ライドンはセッション・ミュージシャンを率いての来日となりました。

つまり、初期PiLのオリジネイターがライドン一人になった状態でのライブだったんです。

このライブが「事件」として語り継がれている最大の理由は、そのセットリストにあります。

なんと、このライブの終盤で、ライドンはセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK (Anarchy In The UK)」を演奏したんです。

「アナーキー・イン・ザ・UK」の衝撃

ピストルズとの訣別、そして「ジョニー・ロットン」というパブリック・イメージの破壊から始まったPiLが、そのピストルズの象徴的な曲を演奏する。当時のライナーノーツによれば、これは「まさかまさかのピストルズ」 であり、会場はとんでもない熱狂に包まれたそうです。PiLというプロジェクトの一つの区切りと、過去を(皮肉を込めて、あるいは清算して)受け入れた、新たな始まりを象徴するような、歴史的なライブ盤ですね。

4. PiLの代表曲と名曲トップ10

PiLには強烈なメッセージを持つ名曲が揃っています。

PiLの最も重要な楽曲群は、極めて重い「歌詞」と、ダンス可能あるいはポップな「音楽構造」という、意図的な『認知的不協和』によって定義づけられていると私は感じます。

4-1. 所信表明:「Public Image」(1978年)

バンドのデビューシングルにして所信表明 。

全英シングルチャートで9位を記録するヒットとなりました。

この曲は、ライドンがまだセックス・ピストルズに在籍していた時期に書かれました 。

歌詞は、ピストルズというバンドと、特にマネージャーのマルコム・マクラーレンから受けた搾取的な扱いに対する痛烈な「仕返し (bite back)」です 。

ライドンが「俺は昔のお前らが思うような俺とは違う (I’m not the same as…)」 と歌う通り、過去の「パブリック・イメージ」との訣別を宣言する内容となっています 。

4-2. チャート最大のヒット曲:「(This is Not a) Love Song」(1983年)

PiLのキャリアにおいて、英国のオフィシャル・シングルチャートで最大のヒットとなったのがこの曲です。

1983年にリリースされ、全英シングルチャートで最高5位を記録しました。

初期の実験的な時代から、よりダンサブルでキャッチーな方向性へ移行する時期の代表曲であり、『ライブ・イン・ジャパン』でも印象的に演奏されています。

“This is not a love song”(これはラブソングではない)と繰り返す歌詞は、ヒットチャートへの皮肉と、それでもヒットしてしまうというPiLらしい天邪鬼な状況を体現していますね。

4-3. バンドを象徴するヒット曲:「Rise」(1986年)

チャート最高位では「(This is Not a) Love Song」に譲りますが、PiLを最も象徴する(”probably the most well-known” )曲として世界的に知られているのが、この「Rise」です。

全英11位を記録しました。

この曲、とてもキャッチーですが、歌詞のテーマは非常に重いんです。

テーマは、当時の南アフリカ共和国で行われていたアパルトヘイト(人種隔離政策)であり、特に投獄されていたネルソン・マンデラについて歌っていると、ライドン自身が後に語っています 。

さらに、北アイルランドの警察による尋問技術(電気拷問)についても言及されています 。

あの有名な「Anger is an energy (怒りはエナジーだ)」というフレーズは、この曲から生まれました 。

抑圧に対する抵抗のエネルギーを示すこの言葉は、後にライドンの自伝のタイトルにもなっています 。

ポップな構造に重いテーマを忍ばせた「トロイの木馬」のような楽曲であり、ゲスト参加したギタリスト、スティーヴ・ヴァイによる革新的で「角張った (angular)」ギターソロ も、当時のロックシーンでは非常に異質で衝撃的でした。

4-4. トラウマとダンス:「Death Disco」(1978/1979年)

私がPiLのすごさを最も感じる曲の一つです。

デビュー直後に発表されたシングルで 、『Metal Box』には「Swan Lake」というタイトルで再録されました 。

タイトルが示す通り、そのリズムはスタンダードな「ディスコ」ビートです 。

しかし、そのダンスビートの上でライドンが絶叫しながら歌うのは、癌で死にゆく自身の母親の最期

享楽的なダンスミュージックというフォーマットを用い、人間の最も深いトラウマである「死」を描き切る。

ある批評家は、この曲を「ダンスフロアで行われる原始的な絶叫セラピー」と評しました 。

この強烈な『認知的不協和』こそ、PiLの思想を象徴する一曲です。

4-5. 代表曲トップ10リスト

「PiLのどの曲から聴けばいいか」という疑問に答えるため、米国のインディ・ロック系サイトdiffuser.fmが選出した「ベスト・ソング TOP10」 に、各楽曲の背景情報を補足したリストを以下に示します 。

これはあくまで一例ですが、彼らの多様なキャリアを掴むのに良いガイドになるかなと思います。

PiL ベスト10(赤テーマ・白抜きタイトル)

Public Image Ltd. ベスト10

順位 曲名 (発表年) 収録アルバム 概要と重要性
1 Public Image (1978) UK Single / First Issue バンドのデビュー曲であり所信表明。ピストルズへの訣別。
2 Rise (1986) ‘Album’ バンド最大のヒット曲。「怒りはエナジーだ」。アパルトヘイトについて歌った曲。
3 Poptones (1979) ‘Metal Box’ キース・レヴィンのギターサウンドが定義づけられた一曲。脆いジャングル(jangle)サウンド。
4 Low Life (1978) ‘First Issue’ 『First Issue』収録曲。ライドンによれば、シド・ヴィシャスについて歌った曲。
5 One Drop (2012) ‘This Is PiL’ 再結成後の代表曲。「我々はカオスから来た、我々を変えることはできない」。
6 Bad Life (1984) ‘This Is What You Want…’ 中期の重要トラック。キース・レヴィン脱退直後のサウンド。
7 Careering (1979) ‘Second Edition’ 『Metal Box』収録曲。ドイツのバンド「Can」からの強い影響がみられる。
8 Banging The Door (1980) ‘Flowers of Romance’ 3人編成(ライドン、レヴィン、アトキンス)時代のダークでリズミカルなトラック。
9 Seattle (1989) ‘Happy?’ 80年代的な光沢あるプロダクションながら、PiLらしいひねりを加えたポップソング。
10 Death Disco (1978) UK Single ライドンが母親の死を歌った曲。ディスコビートと絶叫の融合。

トップ10リストについての補足

ちなみに、米サイトdiffuser.fmが選んだこのリスト には、全英5位を記録した「(This is Not a) Love Song」 が入っていませんね。

これは選者の好みや、曲の「重要性」と「ヒット」を別々に評価した結果かなと思いますが、PiLのヒット曲を語る上では外せない一曲です。

5. 後世のバンドへの影響

PiL、特にキース・レヴィンのギター奏法が持つ二面性(「メロディックな構築性」と「ノイジーな解体性」)は、その後のオルタナティヴ・ロックの二大潮流を生み出す源泉となりました 。

5-1. U2への影響

抽象化された都市空間と放射状のラインが広がる中、赤と黒を基調とした幾何学的構図で描かれた、ポストパンクからU2のサウンドへの影響を象徴するイメージ。
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デビュー曲「Public Image」などで聴ける、シンプルながらも催眠的なアルペジオと、「チャイム(鐘)のように鳴り響き、高揚するギター」サウンド 。

これは、U2のジ・エッジやシンプル・マインズといった、80年代のスタジアム級の「ビッグ・ミュージック」と呼ばれるバンド群のサウンド設計図になったと言われています 。

ジ・エッジのディレイを多用したきらびやかなアルペジオは、レヴィンのアプローチなしには生まれなかったかもしれません。

5-2. Radioheadやシューゲイザーへの影響

ピンク色の霞がかった光の中で、ギターを弾く人物のシルエットが浮かび上がる、夢のようなシューゲイズ風のイメージ。
ジェネレーションB イメージ

一方で、アルバム『First Issue』の1曲目である9分超の大曲「Theme」 で聴けるような、即興的で「目が眩むようなエフェクト」と「ふらふらする(woozy)コード」 は、全く別の系譜も生み出します。

このノイジーで空間的なサウンドは、その10年後に登場するMy Bloody Valentine(ケヴィン・シールズ)などのシューゲイザーが追求した「雰囲気(アトモスフィア)」を明らかに先取りしていました 。

現代のバンドへの共鳴

Sonic Youth、The Smiths、そしてRadioheadといった、オルタナティヴ・ロックの最重要バンドたちのサウンドも、PiL(特にレヴィン)が確立したサウンドの先例がなければ、今とは違ったサウンドになっていたかもしれない、と指摘されています 。

この影響は21世紀の現代にも続いています。Fontaines D.C.Black MidiIdlesDry Cleaningといった、英国やアイルランド出身の実験的な現代のギターバンドのサウンドを聴くとき、私たちはPiLが切り開いた革命的な遺伝子の響きを、今なお感じ取ることができるのです 。

6. PiLの「現在」:2025年最新ツアー情報

PiLの活動は過去のものではありません。

2025年、バンドはジョン・ライドン個人の深い悲劇を乗り越え、再びステージに戻ります。

6-1. 2025年大規模ツアー「This Is Not The Last Tour」

PiLは、2025年に英国およびアイルランドを巡る大規模ツアー「This Is Not The Last Tour(これが最後のツアーではない)」の開催を公式に発表しました 。

2025年5月22日のブリストル公演を皮切りに、ダブリン(6月12日)、カーディフ(6月14日)などを経て、8月16日のベルファスト公演まで、23日間にわたる夏のツアーを敢行しました 。さらに、チェコやポーランドでのフェスティバル出演(8月22日、23日)を行い、英国での冬のツアー(12月27日〜2026年1月)も予定されています 。

ツアーの最新スケジュールやチケット情報の詳細は、バンドの公式サイトで確認するのが確実です。
(出典:PiL Official Website Tour Page )

6-2. ツアー決定の背景にあるライドンの悲劇

この2025年のツアー決定は、単なる「レガシー(遺産)・ツアー」ではありません。

これは、ライドンが深い喪失から立ち直るための、ファンとの「相互扶助」的な行為だと私は感じています。

2023年、ライドンは立て続けに個人的な悲劇に見舞われました。

まず4月、彼が長年献身的に介護を続けてきた、40年以上の連れ添いである妻のノラ・フォスター (Nora Forster) がアルツハイマー病で亡くなりました

さらに2023年12月には、長年の友人でありPiLのマネージャーであったジョン・ランボー・スティーブンスも急逝しました 。

ライドンは「どう進めばいいかわからなくなった」と語り、PiLのツアー活動はこれで終わりかもしれないと考えていたそうです 。

しかし、彼は2024年春に(以前から決まっていた)スポークン・ワード(朗読)のソロツアーを実施 。

その際、ファンからの「圧倒的にポジティブな」反応と、「PiLのツアーをもう一度やってほしい」という多くの声に勇気づけられました 。

ライドンは「ソファに座ったままでいることはできなかった」「バンドは彼らにとってそれほど大きな意味があるのだ」と述べ、ファンの後押しがツアー再開の直接的な理由であったことを明かしています 。

6-3. まとめ:今も続く「カオス」の哲学

Public Image Ltd. の歴史を象徴するアイコンや新聞断片、フィルム缶、塔のシルエット、抽象的な模様が赤・黒・黄色を基調としたコラージュとして組み合わされたアートワーク。
ジェネレーションB イメージ

今回は、「PIL バンド」こと Public Image Ltd. について、その核心から最新情報まで深く掘り下げてきました。

セックス・ピストルズの「ジョニー・ロットン」というパブリック・イメージを自ら破壊し、「Ltd.(有限会社)」として自らの表現を管理することから始まったPiL 。

そのサウンドは、キース・レヴィンの革新的なギター とジャー・ウォブルの原始的なベース という奇跡の化学反応から生まれ、ポストパンクというジャンルを定義しました。

チャートでの最大のヒット「(This is Not a) Love Song」 や、バンドを象徴する「Rise」で聴かせたように、彼らは常にポップミュージックの構造すらも皮肉の対象とし、その影響はU2からRadiohead 、さらには現代のバンドにまで脈々と受け継がれています。

そして今、深い個人的な悲しみを乗り越え、ファンの声に後押しされて再びステージに立とうとしています 。

彼らの「ルールがない」 、「カオス」 の哲学は、結成から45年以上経った今も、生々しく続いているんですね。

まだPiLのサウンドに触れたことがない方は、まずは実験主義の頂点である『メタル・ボックス』 や、ポップと批評性が融合した『アルバム』 あたりから、彼らの唯一無二の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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