こんにちは。ジェネレーションB、運営者の「TAKU」です。
あなたはニューヨークドールズの代表曲を探しているんですね。
彼らの音楽って、一度ハマると抜け出せない独特の魅力がありますよね。
ただ、「代表曲」といっても、いわゆる「ヒット曲」とはちょっと事情が違うのがドールズの面白いところです。
実は彼ら、活動当時は商業的にまったく売れませんでした。
1973年の1stアルバムは批評家には絶賛されたものの、チャートでは最高116位 と振るわず、レコード会社が期待したような「ヒット」にはならなかったんです。
私も最初、彼らの功績を知らずに「ヒット曲はどれだろう?」と探したくちなので、その気持ちはわかります。
じゃあ、なぜ今こんなに「クラシック」として扱われているのか。
それは、彼らの曲がヒットチャートの代わりに、後のパンク・ロックやハードロックのミュージシャンたちに直接突き刺さったからなんです 。
特に1stアルバムの曲や、それがセックスピストルズに与えた影響 は計り知れません。
この記事では、単なる人気曲としてではなく、音楽の歴史を変えた「設計図」としてのニューヨークドールズの代表曲を、私なりの視点で深掘りしていきたいと思います。
この記事でわかること
- ニューヨークドールズの「代表曲」の定義
- 絶対に外せないトップ3の名曲解説
- 1st/2ndアルバムの重要な楽曲
- 彼らが後世のバンドに与えた絶大な影響
1. ニューヨークドールズ代表曲トップ3
まず、ドールズを知る上で絶対に欠かせない、核となる3曲から紹介しますね。これぞ「代表曲」と呼べる楽曲たちです。
この3曲はすべて、彼らの画期的なファースト・アルバム『New York Dolls』に収録されています。
1-1. 象徴的な「Personality Crisis」
これはもう、ドールズのすべてを3分47秒に凝縮した、完璧なステートメントであり、最強のオープニングトラックですよね 。私も大好きです。
最大の特徴は、あの陽気な「ブギウギ・ピアノ」。
これはプロデューサーのトッド・ラングレンのアイデア(と演奏)だと言われていますが 、この一聴すると洗練された伝統的なロックンロールの音と、バンドが叩き出す「下品な(raunchy)」なデュアル・ギターサウンド 、そしてデヴィッド・ヨハンセンのヒステリックなボーカルが正面からぶつかり合ってるんです。
曲の途中で急に演奏が止まる「芝居がかった一時停止」 も、わざと聴き手を不安にさせる仕掛けですよね。
歌詞も「お前は春の午後のプリマバレリーナ」 といったイメージを叩きつけます。
まさに曲のタイトル通り、伝統的なロック(ピアノ)と破壊(絶叫)、洗練と粗野、男性的と女性的(グラムの美学) が混ざり合って、制御不能な「人格の危機」を音楽自体が実践している…。
まさに象徴的な1曲だと思います。
その功績は広く認められており、ローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大な500曲」にも選出されています。(出典:Rolling Stone ‘The 500 Greatest Songs of All Time’)
1-2. 退廃とポップが光る「Trash」
「Personality Crisis」と両A面シングルとしてリリースされたのが、この「Trash」です 。
この曲の魅力は、「下品さ(スリーズ)」と「ポップ」の奇跡的な融合にあると思います。
批評家からも「バカバカしくもタフ」「悪意と優しさが同居」と評される 通り、ジェリー・ノーランの卓越したドラムもすごいんですが 、やっぱり耳に残るのは、プロデューサーのトッド・ラングレンが加えた「ガール・グループ風」のコーラス 。
「トラァ~~ッシュ!」っていう、あの高揚感のあるバックボーカルが最高ですよね。
歌詞の世界観も深いです。
ここでいう「Trash(クズ、ゴミ)」は、文字通りのゴミではなく、社会から見捨てられた人たち、つまりドールズ自身やその周りにいた人々のことなんです 。
でも、彼らはそれを絶望的に歌うんじゃなくて、「俺の人生を捨てるな(don’t throw my life away)」 と(あるいは「俺の命を奪うな(don’t take my life away)」 とも聴こえますが)、最も甘美なポップソングの手法でロマンティックに歌い上げる 。
この汚れた現実と甘美な幻想の倒錯した関係性こそ、ドールズだなと感じさせられます。
1-3. ジョニーサンダースと「Jet Boy」
1stアルバムの最後を飾るクロージング・トラックが、この「Jet Boy」。
私、個人的にはこの曲が一番好きかもしれません。
純粋なロックンロール・カタルシス(解放)を体現した曲です 。
とにかくジョニー・サンダースのギターが全てを物語っている曲かなと 。
彼が弾き出すあのリフは、デヴィッド・ボウイの「Rebel Rebel」やザ・キンクスの「You Really Got Me」に匹敵する、ロック史に残るリフだと思います 。
彼の「有刺鉄線(barbed wire)」 のようなギターサウンドは、この曲の「メロディックなソロ」や「サーフ・ギター・ネック・スライド」 で頂点に達してますよね。
この曲は、アルバム全体の「解決」として機能しているんです。
アルバムが「Personality Crisis」という「混乱」で始まって、「Looking for a Kiss」の「ドラッグ」、「Frankenstein」の「倒錯」 と、都市の暗部を提示してきた。
それら全ての問題提起に対して、論理的な答えは示さず、この「Jet Boy」っていう純粋なロックンロールのエネルギーで全ての不安を爽快に吹き飛ばして終わる 。
このカタルシスがたまらないんです。
理屈じゃなくて、音で解決する。
これぞロックンロールだなと。

1-4. 1stアルバムの他の名曲
トップ3を紹介しましたけど、1973年の1stアルバム『New York Dolls』は、はっきり言って全曲が代表曲の宝庫です 。
トッド・ラングレンがプロデュースしたこのアルバムには、他にもバンドのDNAを形成する重要な曲がたくさん収録されています 。
特に「Frankenstein (Orig.)」や「Pills」、「Vietnamese Baby」あたりも外せません。
Frankenstein (Orig.)
アルバムの中でも特に異彩を放つ、ダークで退廃的な曲。
タイトルの「(Orig.)」は、エドガー・ウィンター・グループが同時期に同名曲をヒットさせたため、「俺たちがオリジナルだ」と主張するためだと言われています 。
単なるホラーソングではなく、「ティーンの不安と機能不全なセクシュアリティへの賛歌」 とも評される、バンドのダークサイドを代表する曲です。
Pills
伝説的なブルース・ミュージシャン、ボ・ディドリーのカバー曲 。
バンドのR&Bルーツ を示すと同時に、ライブでも定番の人気曲でした 。
あえてボ・ディドリーの代名詞である「ボ・ディドリー・ビート」が使われていない曲を選ぶ ところに、彼らのひねくれたセンスと音楽的素養が感じられます。
Vietnamese Baby
冒頭の不穏な「ゴング」の音 が印象的な曲。
これは、当時まだ泥沼化していたベトナム戦争を直接扱った、極めて社会意識の高い楽曲です 。
戦争がもたらす「自己破壊的な経験」 や「生存者の罪悪感」 といった、兵士や国民の心理的トラウマを描いており、後のパンク・ムーブメントに数年先駆けて怒りを表明した重要な曲と言えます 。
1-5. 「Looking for a Kiss」の歌詞
この曲も1stアルバム収録で、ファンの間ですごく人気が高い曲ですよね 。「有名な楽曲」 としても知られています。
この曲を語る上で外せないのが、冒頭のデヴィッド・ヨハンセンのセリフです。
「When I say I’m in love, you’d best believe I’m in love, L-U-V」ってスペルアウトする部分 。
これ、実は1960年代のガール・グループ、ザ・シャングリラスの「Give Him a Great Big Kiss」からの直接的な引用なんです 。
ここがドールズのすごいところで、60年代のティーンの無垢なドラマ(L-U-V)を引用した直後に歌われる歌詞は、「Your friends all come to your house to shoot up in your room(友達がみんな君の部屋にヤクを打ちに来る)」 っていう、ドラッグに汚染された70年代の冷めた現実… 。
そしてヨハンセンは叫ぶんです。
「I mean a fix ain’t a kiss!(ヤク(fix)はキスじゃない!)」 って。
この無垢なロマン(L-U-V)と退廃的な現実(a fix)の鮮烈な対比こそ、彼らの世界観の核心だと思います。
ちなみに、彼らがオマージュを捧げたシャングリラスのプロデューサーは、伝説的なシャドウ・モートン 。
ドールズは、この1stアルバムの後、2ndアルバムのプロデューサーとして、そのシャドウ・モートン本人を起用することになります 。
「Subway Train」の魅力
「Subway Train」も1stアルバムの名曲で、評論家筋からも高く評価され 、バンドのブルージーな側面がよく出ている曲だと思います 。
ただ、当時のクリームやレッド・ツェッペリンみたいなハードなブルース・ロックとは全然違うアプローチなんですよね。
彼らは、ブルース音楽の伝統的なモチーフである「機関車」を、彼らの日常であるニューヨークの「地下鉄(Subway)」という、現代的かつ都会的なモチーフに置き換えたんです 。
デヴィッド・ヨハンセンが「I seen enough drama just riding on a subway train(地下鉄に乗ってるだけで十分なドラマを見てきた)」 って歌うように、ニューヨークの都市生活における「報われない愛、セックス、孤独」 やロマンス が投影されていて、すごく深みのある曲だなと思います。
2. ニューヨークドールズ代表曲と後世への影響
1stアルバムが強烈すぎますが、セカンド・アルバムにも重要な曲はありますし、何より彼らの「代表曲」の価値は、その後の音楽シーンにどれだけの影響を与えたかで決まるんです 。
2-1. 2nd『Too Much Too Soon』
1974年にリリースされた2ndアルバムが『Too Much Too Soon』(邦題:悪徳のジャングル)です 。
1stほどの歴史的評価は得ていないかもしれませんが 、プロデューサーがすごいんです。
「Looking for a Kiss」で引用したザ・シャングリラスの生みの親、伝説的なシャドウ・モートン本人を起用してるんですよ 。
自分たちのルーツに本気だったことが伝わってきますよね。
このアルバムは、オリジナル曲もいいんですが、カバー曲のセンスが光る作品でもあります 。
センスが光るカバー曲
1stの「Pills」もそうでしたが、彼らは自分たちのR&Bルーツ を隠しません。このアルバムでも、アーチー・ベル&ザ・ドレルズの「(There’s Gonna Be a) Showdown」 や、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Don’t Start Me Talkin’」 などを、ドールズ流の解釈でカバーしています。
2-2. 「Stranded in the Jungle」
このアルバムからのファースト・シングルが「Stranded in the Jungle」です 。
これ、実は1950年代のドゥーワップ・グループ、ザ・ジェイ・ホークス(The Jay Hawks)またはザ・カデッツ(The Cadets)のカバーなんです 。
オリジナルは、主人公の乗った飛行機がジャングルに不時着して人食い人種に捕まる…みたいなコミカルな「ノベルティ・ソング」なんですけど 、ドールズがこれをやると、1stで描いた「マンハッタン」っていう「都会のジャングル(Urban Jungle)」の比喩 として、見事にハマるんですよね。
バンドの洗練されたユーモアセンスが大好きです。
2-3. 「Human Being」のメッセージ
2ndアルバムのオリジナル曲で、私が一番重要だと思うのが、この「Human Being」です 。
これは、「自己尊重と個人の自由への賛歌」 みたいな曲です。
当時、彼らはその奇抜なファッション(女装 )やスキャンダラスな振る舞いで、まともな「人間」として扱われないことも多かった。
そんな批評家たちに向けた、彼らなりの回答だったんです 。
ヨハンセンは「もし俺が気に食わないなら、『聖人(a saint)』でも『ペンキ塗りたてのプラスチック人形(a plastic doll)』でも探すんだな。
そいつは狂気の中に座って、いつも古風に振る舞ってくれるだろうさ」 と歌います。
そして、オリジナル・ラインナップのドールズが公式スタジオ盤に残した最後の言葉は、この曲の「I’m a human being(俺は人間だ)」という、感動的なまでの自己肯定のフレーズでした 。
2-4. セックスピストルズへの影響
ニューヨークドールズの「代表曲」がなぜ重要か。
その答えが、後世、特にパンク・ロックへの絶大な影響力です 。
彼らがいなければ、ニューヨークのパンクシーン(ラモーンズ、ブロンディ、テレヴィジョンなど)の誕生はなかったか、全く違ったものになっていたでしょう。
彼らはまさにシーンの「培養皿(Petri Dish)」だったんです 。
特にロンドン・パンクのセックス・ピストルズとの関係は、推測ではなく、非常に直接的なものです 。
ピストルズとの直接的な繋がり
- マネージャー: ピストルズを仕掛けたマルコム・マクラーレンは、元々ドールズのマネージャー(解散間際)でした 。マクラーレン自身が「ピストルズでやろうとしたことは、ドールズで失敗したことだ」と語っているほどです 。
- ギタリスト: ピストルズのギタリスト、スティーブ・ジョーンズは、ジョニー・サンダースのギタースタイルを模倣したと公言しています 。マクラーレンがサンダースのギターをイギリスに持ち帰り、それをジョーンズに与えたという話もあるくらいです 。
つまり、ドールズがいなければ、あのパンク・ムーブメントは全く違う形になっていた可能性が非常に高いんですよね。


2-5. ニューヨークドールズの代表曲とは
ここまで見てきたように、ニューヨークドールズの代表曲は、チャートを賑わせた「ヒット曲」ではありません。
彼らの代表曲とは、「パンク」と「ヘアメタル」という、一見正反対な2大ジャンルの共通の祖先 となった「音楽の設計図」 そのものなんです。
2大ジャンルへの影響の内訳
- パンク(セックス・ピストルズ、ラモーンズ、ザ・クラッシュなど )は、ドールズの「サウンド(ジョニー・サンダースのRAWなギター )」と「アティチュード(反逆精神 )」を受け継ぎました。
- ヘアメタル(ガンズ・アンド・ローゼズやモトリー・クルー、キッスなど )は、ドールズの「ビジュアル(厚化粧やスパンデックス )」と「スリージーな(下品な)ロックスタの化学反応 」を受け継ぎました。
「Personality Crisis」や「Trash」といった楽曲は、その両方の要素が分化する前の、混沌とした「原液」の輝きを放っています。
彼らが音楽史に残した功績は、売上枚数なんかでは到底測れない、本当に偉大なものだと私は思います。








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