「小型ボートが空母になった」井上尚弥を支えるチームの力と、挑戦者・中谷潤人の原点
井上尚弥の圧倒的な強さは、彼一人の力だけで築かれたものではない。
その裏には「TEAM INOUGE」と呼ばれる強固なサポート体制が存在する。
一方、モンスターが次なるターゲットとしてラブコールを送る無敗の3階級制覇王者・中谷潤人にも、世界王者へと駆け上がった確固たる原点があった。
ボクシング界のトップを走る二人の背景に迫る。
大橋会長が語る「TEAM INOUE」の実像
「小型ボートが空母になった」――。
大橋ジムの大橋秀行会長は、井上尚弥と共に歩んできたチームの成長をそう表現する。
プロモーターとして対戦交渉からスパーリングパートナーの招聘までを担う大橋会長は、「決して楽じゃなかったし、綱渡りもあった」とキャリアを振り返る。
2階級上げてのナルバエス戦への挑戦や、フルトン戦の延期など、数々の重要な局面で井上本人やチームの意見を尊重し、臨機応変に対応してきたこと自体が「チームワークだった」と語る。
練習現場では、父・井上真吾トレーナーを筆頭に、ミット持ちの太田光亮トレーナー、フィジカル担当の鈴木康弘トレーナー、カットマンの佐久間史朗氏など、各分野のスペシャリストがそれぞれの役割を全う。
栄養士やマッサージ師も加わり、巨大なチームがモンスターを支えている。
2016年にチーム入りした太田トレーナーは、元々はジムの一般会員を担当していたが、井上本人から「ワンツーだけミットを持ってくれませんか」と声をかけられたのが始まり。
井上が若いトレーナーの感性に反応し、そこから最高のパートナーシップが生まれた。
中谷潤人、”中1の誓い”「俺は世界チャンピオンになる!」
井上尚弥が「中谷くーん」とリング上から対戦を呼びかけるほど、その実力を認める中谷潤人。
彼の強さの原点は、故郷・三重県での少年時代にある。
小学生で始めた空手では「一度も勝てなかった」という意外な過去を持つ。
しかし、店の常連客に勧められてボクシングジムを体験した際、元東洋太平洋王者・石井広三氏のサンドバッグ打ちの音と迫力に衝撃を受けた。
両親を説得し、中学1年生になった4月1日にジムへ入門。
その日、彼は「俺は世界チャンピオンになる!」と誓いを立てた。
その純粋な喜びと決意が、今日の無敗の3階級制覇王者・中谷潤人へと繋がっている。
名伯楽テディ・アトラスが井上を絶賛「圧倒的すぎた」
マイク・タイソンを指導した世界的名伯楽、テディ・アトラス氏が、井上尚弥のアフマダリエフ戦を自身のYouTubeチャンネルで絶賛した。
アトラス氏は「イノウエが圧倒的すぎた。速すぎたんだ。まるで次元が違うぐらいの差だ」と、両者の実力差を表現。
さらに、カルデナス戦でダウンを喫した経験から学び、「『もう無謀に前に出ない』という教訓が、ちゃんとプログラムされていた」と、井上のボクシングIQの高さを称賛。
「完成されたファイターであることを証明した試合だった」と締めくくった。
ドーピング検査は「すべて陰性」
WBCは10月1日、9月14日に行われた井上尚弥vsムロジョン・アフマダリエフ戦におけるドーピング検査の結果が、両選手ともに「すべて陰性」だったと正式に発表した。
これにより、試合の正当性が改めて証明された形となる。



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