こんにちは。ジェネレーションB、運営者の「TAKU」です。
イアン・デューリーの名盤を探しているけれど、どのアルバムから聴けばいいのか迷っていませんか?
彼の音楽はパンク、ファンク、ミュージックホールなど様々な要素が混ざり合っていて、一言では言い表せない魅力がありますよね。
彼のキャリアをたどると、前身バンドのキルバーン&ザ・ハイローズ時代から、ザ・ブロックヘッズとの活動、そして俳優としての意外な経歴まで、その多才さに驚かされます。
また、彼の独特な歌詞の世界観や、後進のアーティストに与えた影響も気になるところだと思います。
この記事では、イアン・デューリーの決定的名盤である『New Boots and Panties!!』や商業的に成功した『Do It Yourself』はもちろん、アルバムには収録されなかった重要なおすすめ曲まで、彼の音楽の核心に迫っていきます。
この記事でわかること
- イアン・デューリーのキャリアの全体像
- 決定的名盤『New Boots and Panties!!』の魅力
- 商業的成功を収めた『Do It Yourself』の特徴
- アルバム未収録のおすすめシングル曲
1. イアン・デューリーの名盤を語る上で欠かせないキャリア
イアン・デューリーというアーティストを理解するには、彼の音楽だけでなく、その背景にあるキャリアを知ることが不可欠です。
パンクムーブメントに大きな影響を与えた前身バンドから、彼の音楽性を確立したザ・ブロックヘッズとの活動、そして俳優としての顔まで。
ここでは、彼の名盤が生まれる土壌となった波乱万丈なキャリアを紐解いていきます。
1-1. パンクの原型キルバーン&ザ・ハイローズの経歴
イアン・デューリーのキャリアの原点、それはキルバーン&ザ・ハイローズというバンドにあります。
1970年代初頭のロンドンのパブロックシーンで活動していた彼らは、商業的な成功こそ収められませんでしたが、その存在感は際立っていました。
当時の多くのパブロックバンドが60年代のR&Bを基調としていたのに対し、彼らのサウンドは50年代のロックンロール、ジャズ、レゲエ、ミュージックホールをごちゃ混ぜにしたような、まさにカオスな音楽性でした。
バンドが設けた唯一のルールは「音が少しでも似ている曲を続けて演奏しない」というものだったそうで、そのアナーキーさが音楽にも表れていますね。
ライブパフォーマンスも過激で、デューリーの威嚇するようなステージングと、「ギャングと浮浪者」と評された風変わりなメンバーの出で立ちは、一部で熱狂的なファンを生み出しました。
カミソリの刃のイヤリングをつけ、マイクスタンドにもたれかかる姿は、後のパンク・アイコンたちに大きなインスピレーションを与えたと言われています。
実はこのバンド、後のパンクムーブメントに絶大な影響を与えています。
特に、セックス・ピストルズのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)は彼らのライブの常連で、デューリーのスタイルから大きな影響を受けたことを公言しているんです。
キルバーンズは、そのDIY精神や反骨的な姿勢で、まさに「パンクの原型」とも言える存在だったわけですね。


1-2. 決定的名盤『New Boots and Panties!!』
イアン・デューリーのキャリアを語る上で、最高傑作との呼び声が最も高いのが、1977年にリリースされたソロデビューアルバム『New Boots and Panties!!』です。(全英5位/BPIプラチナ 出典:officialcharts.com)
当時35歳だったデューリーが放ったこの一枚は、パンク全盛期にありながら、そのどれとも違う独創性で英国音楽シーンに衝撃を与えました。
このアルバムの魅力は、なんといってもその音楽的なごった煮感。
ファンク、ジャズ、ディスコ、ミュージックホールといった多様なジャンルが、ザ・ブロックヘッズのタイトな演奏によって完璧に融合されています。
パンクの攻撃性とは一線を画す、知的でユーモアあふれるサウンドが特徴ですね。
パンクの精神性は持ちつつも、音楽的にはより洗練されている、というアプローチが新しかったんだと思います。
『New Boots and Panties!!』のポイント
- 音楽性: ファンクやジャズを基調とした洗練されたサウンド。
- 歌詞: 労働者階級の日常を切り取ったウィットに富んだ物語。
- 評価: 全英チャート5位を記録しプラチナ認定。彼の「最初にして最高の傑作」と評されることが多いです。
「Sweet Gene Vincent」や「Billericay Dickie」といった代表曲をはじめ、アルバム全体を通してデューリーの唯一無二の世界観が炸裂しています。
発売当初の売上は控えめでしたが、アルバム未収録のシングルヒットがきっかけで人気に火が付き、結果的にロングセラーとなりました。
まさに、彼のキャリアを代表する決定的名盤と言えるでしょう。
1-3. ザ・ブロックヘッズの主要メンバー
イアン・デューリーの音楽を語る上で、彼のバックバンドであるザ・ブロックヘッズの存在は絶対に欠かせません 。
彼らは単なるバックバンドではなく、デューリーの音楽を共に創り上げた、まさに運命共同体でした。
卓越した演奏技術を持つメンバーが集まったことで、デューリーのユニークな歌詞とボーカルが最大限に活かされたんですね。
バンドの中心にいたのは、以下のメンバーたちです。
| メンバー名 | 担当楽器 | 特徴 |
|---|---|---|
| チャズ・ジャンケル (Chaz Jankel) | ギター, キーボード, 音楽監督 | デューリーの歌詞に洗練された音楽的骨格を与えた最重要人物 。デューリー自身が彼らの関係をレノン=マッカートニーに例えるほどでした。 |
| ノーマン・ワット=ロイ (Norman Watt-Roy) | ベース | 彼のファンキーで唸るようなベースラインはバンドのサウンドの核となりました。同世代のベーシストの中でも最高峰と評されています。 |
| チャーリー・チャールズ (Charley Charles) | ドラムス | ワット=ロイと共に「盤石のバックビート」を形成したドラマー 。 |
| ミッキー・ギャラガー (Mickey Gallagher) | キーボード | バンドのサウンドに彩りを加える重要な役割を担いました 。 |
| ジョン・ターンブル (John Turnbull) | ギター | チャズ・ジャンケルと共にギターサウンドを構築しました 。 |
彼ら卓越したミュージシャンたちのファンキーでジャジーな演奏があったからこそ、デューリーの独特なボーカルと歌詞が最大限に活かされたんですね。
『New Boots and Panties!!』以降の作品は、実質的に「イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ」の作品と言っても過言ではないでしょう。
1-4. 独特な歌詞の世界観とユーモア
イアン・デューリーの最大の魅力の一つは、その独特な歌詞の世界観にあると思います。
彼は「言葉の職人」と評されるほど、言葉選びのセンスが抜群でした。
彼の歌詞は、ロンドンやエセックスの労働者階級の日常を、鋭い観察眼とユーモアを交えて描き出しています。
コックニー(ロンドンの下町訛り)のスラングを巧みに使いこなし、思わずニヤリとしてしまうような言葉遊びが満載なんです。
しかし、ただ面白いだけではありません。
彼の歌詞には、ユーモアと隣り合わせの「脅威」や「哀愁」が潜んでいます。
例えば「If I Was With A Woman」という曲では、攻撃的な言葉の裏にある人間の脆さや傷つきやすさを見事に描き出しています。
ポリオとの闘いと「Spasticus Autisticus」
デューリーは7歳でポリオを患い、左半身に障害が残りました。この経験は彼の人生とアートに大きな影響を与えました。特に1981年の「国際障害者年」に際して発表された「Spasticus Autisticus」は、偽善的なチャリティへの痛烈な批判であり、障害を持つ当事者からの力強いアンセムとして物議を醸しました 。BBCから放送禁止処分を受けましたが、その反骨の精神は、2012年のロンドン・パラリンピック開会式で演奏されることで、最終的に公に認められました 。
彼の歌詞は、単なる歌の言葉というより、一つの文学作品のよう。
その奥深さが、今も多くの人々を惹きつけてやまない理由かもしれません。
1-5. 後進に与えた多大な影響
イアン・デューリーが後のミュージシャンに与えた影響は計り知れません。
彼は多くのアーティストにとって、まさにパイオニア的な存在でした。
彼の音楽やスタイルは、特定のジャンルに留まらず、様々なシーンに影響を与えています。
パンク・ニューウェーブへの影響
前述の通り、セックス・ピストルズのジョン・ライドンはキルバーンズ時代からの熱心なファンで、そのステージングやアティチュードに大きな影響を受けました 。
デューリーの使うコックニー訛りや、社会の周縁にいる人々を描く視点は、パンクの精神性と深く共鳴したんですね。
スカ・ブリットポップへの影響
80年代のスカ・ムーブメントを代表するマッドネスは、「デューリーとレイ・デイヴィス(ザ・キンクス)がいなければ、自分たちは存在しなかった」と語っています。
彼らのユーモラスで英国的な世界観には、確かにデューリーのDNAが感じられますね。
さらに90年代のブリットポップを牽引したブラーのデーモン・アルバーンも、デューリーのウィットに富んだキャラクター描写やソングライティングから影響を受けた一人です 。
パンク、ニューウェーブ、スカ、ブリットポップと、英国ロックの重要な流れの中に、常にイアン・デューリーの影があると言ってもいいでしょう。
彼の独創性が、いかに多くの才能を刺激したかがわかりますね。
1-6. 俳優としての多彩なキャリア
イアン・デューリーの多才ぶりは音楽だけにとどまりません。
彼は俳優としても、非常に個性的なキャリアを築いています 。
1980年代半ば、音楽活動が少し落ち着いた頃から俳優業を本格化させ、数多くの映画やテレビドラマ、舞台に出演しました。
彼の強烈な個性と存在感は、スクリーンやステージの上でも遺憾なく発揮されたんですね。
特に有名な出演作としては、以下のようなものがあります。
主な映画出演作
- 『ポランスキーのパイレーツ』(1986年)
- 『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989年)
- 『ホドロフスキーの虹泥棒』(1990年)
- 『ジャッジ・ドレッド』(1995年)
ロマン・ポランスキーやピーター・グリーナウェイといった、カルト的な人気を誇る監督たちの作品に起用されているあたり、彼の特異な魅力が買われていたのがわかります 。
さらに、自ら脚本と音楽を手掛けたミュージカル『Apples』を発表するなど、その創作意欲は留まるところを知りませんでした。
音楽家としてだけでなく、表現者として多方面で才能を発揮した「ルネサンス・マン」。
それがイアン・デューリーのもう一つの顔だったのです。
2. イアン・デューリーの名盤とおすすめ曲を深掘り
彼のユニークなキャリアを理解したところで、いよいよ核心である名盤とおすすめ曲に迫っていきましょう。
『New Boots and Panties!!』と双璧をなす名盤から、彼の名を世に知らしめたアルバム未収録のシングルまで、これさえ押さえておけば間違いないという作品を厳選してご紹介します。
2-1. 商業的成功作『Do It Yourself』
『New Boots and Panties!!』と並んで、イアン・デューリーのキャリアを代表するもう一つの名盤が、1979年リリースの『Do It Yourself』です。(全英2位/BPIゴールド 出典:officialcharts.com)
このアルバムは、全英チャートで最高2位を記録する大ヒットとなり、彼の人気を決定的なものにしました。
前作のロウな手触りとは少し趣が異なり、本作ではより洗練されたディスコやファンクの要素が前面に出ています。
ザ・ブロックヘッズの演奏もさらにタイトになり、「Waiting For Your Taxi」のような感染力のあるパブロック・ファンクから、「Quiet」のような英国風の軽快なナンバーまで、ダンサブルな楽曲が満載です 。
まさにバンドとしてのケミストリーが頂点に達した作品と言えるかもしれません。
34種類のジャケット!?
ただし、デューリーの方針で、大ヒットシングル「Hit Me With Your Rhythm Stick」が収録されなかったのは少し残念なポイントかもしれません。
とはいえ、アルバム全体のクオリティは非常に高く、彼のキャリアのピークを捉えた傑作であることは間違いないでしょう。
2-2. 「Sex & Drugs & Rock & Roll」の真意
「Sex & Drugs & Rock & Roll」というフレーズを聞いたことがない人はいないでしょう。このあまりにも有名な言葉を生み出したのが、イアン・デューリーの同名曲です。
1977年にシングルとしてリリースされたこの曲は、意外にも全英チャートに入ることはありませんでした 。
しかし、そのキャッチーなフレーズは瞬く間に広まり、ロックンロールのライフスタイルを象徴する言葉として定着しました。
多くの人がこの曲を「快楽主義の賛歌」だと思っていますが、実はデューリーが込めた真意は少し違います。
彼はこの曲について、「人生にはセックスやドラッグやロックンロール以上のものがある、ということを示唆しようとした穏やかな忠告だった」と語っているんです。
表層的なイメージとは裏腹に、実は深いメッセージが込められた一曲は、“Sex & Drugs & Rock & Roll”は77年の単独シングルで、初期UK盤のアルバム本編には未収録。
のちの再発・地域盤でボーナス的に加えられた版もあり、現在のサブスク配信の音源でも『New Boots and Panties!!』のトリを飾っています。
2-3. 大ヒット曲「Hit Me With Your Rhythm Stick」
イアン・デューリーのキャリアで最大のヒット曲といえば、間違いなくこの「Hit Me With Your Rhythm Stick」でしょう。
1978年にリリースされたこのシングルは、全英チャートで見事1位を獲得し、79年に全英1位。
オリジナル期の累計は約97.9万枚、その後のダウンロード時代の集計更新で129万枚超のミリオンに到達しています。
この曲の魅力は、何と言ってもその中毒性の高いグルーヴ。
ノーマン・ワット=ロイが弾く1小節に16個の音符を刻む超絶ベースラインと、フリージャズのようなサックスソロが絡み合う、非常に複雑でダンサブルな楽曲です 。
歌詞も秀逸で、「リズム・スティックで私を打って」というフレーズは、一見すると過激ですが、実は反暴力のメッセージが込められていると言われています 。
また、「リズム・スティック」が打楽器であると同時に、男性器を意味するスラングでもあるという二重の意味も持たせています 。
音楽的な洗練と歌詞の奥深さが完璧に融合した、まさに彼の代表曲。
アルバム未収録曲なので、聴き逃し厳禁です。
2-4. その他のおすすめ曲を紹介
ここまで紹介したアルバムやシングル以外にも、イアン・デューリーには名曲がたくさんあります。
ここでは、特におすすめしたい曲をいくつかピックアップしてご紹介します。
必聴のアルバム未収録シングル
- “What a Waste” (1978年)
デューリーにとって初のトップ10ヒットとなったシングル(全英9位) 。平凡な仕事よりも芸術的な人生を選ぶことの素晴らしさを歌った、ジャジーで心地よいグルーヴが魅力の一曲です。 - “Reasons to Be Cheerful, Part 3” (1979年)
全英3位を記録したヒット曲 。ファンキーなディスコビートに乗せて、デューリーが「元気になる理由」を次々とリストアップしていくユニークな構成の曲です。聴いているだけでハッピーな気分になれる、人生賛歌ですね。 - “Spasticus Autisticus” (1981年)
彼の楽曲の中で最も物議を醸した一曲 。前述の通り、国際障害者年へのアンチテーゼとして作られ、その過激な内容からBBCで放送禁止になりました 。しかし、その反骨精神は多くの人々に支持され、彼のアイデンティティを象徴する重要な楽曲となっています。
これらの曲は、彼の音楽の多様性と深さを知る上で欠かせないものばかり。
ぜひアルバムと合わせて聴いてみてください。
2-5. まとめ:必聴のイアン・デューリー名盤
さて、ここまでイアン・デューリーのキャリアと作品を振り返ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
結論として、「イアン・デューリー 名盤」を探しているなら、まずは彼の最高傑作である『New Boots and Panties!!』を聴くことを強くおすすめします。
彼の独創的な音楽性と歌詞の世界観が凝縮された、まさに完璧な一枚です。
そして、彼のキャリアの頂点を記録した『Do It Yourself』も必聴です。
よりポップでダンサブルなサウンドは、また違った魅力を感じさせてくれるはず。
さらに重要なのは、彼の代表曲の多くがアルバム未収録のシングルであるという点。「Hit Me With Your Rhythm Stick」などの楽曲を合わせて聴くことで、初めてイアン・デューリーというアーティストの全体像が見えてくるのかなと思います。
残念ながらイアン・デューリーは2000年に癌のためこの世を去りましたが、彼の残した音楽と反骨精神は今も色褪せることがありません。
唯一無二の個性で英国音楽シーンに強烈な爪痕を残した彼の作品は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。
この記事が、あなたの「イアン・デューリー 名盤」探しの助けになれば嬉しいです。
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