20年来のボクシングファンとして言わせてもらうが、今の日本ボクシング界は、我々が長年夢見てきた景色そのものだ。
絶対王者・井上尚弥を中心に、世界が、ライバルが、そして伝説たちが動いている。
12月のサウジアラビア決戦、そしてその先に見える“本物”の頂上決戦。
その最新の伏線を、ファン目線で読み解いていこう。
12月の“前哨戦”――挑戦者に「自殺行為に近い」との声も
自販機のコンポタを見ると季節を感じ過ぎてしまう。そしてワクワクする
— 井上尚弥 Naoya Inoue (@naoyainoue_410) October 23, 2025
寒くなって来たから体調には気をつけてねー
まず、12月27日に井上尚弥がサウジアラビアで迎える挑戦者、アラン・ピカソ。
メキシコの元世界王者ホセ・ルイス・カスティージョが「自殺行為に近い」「レベルが違う」とまで言い切った。
正直、我々ファンも同じ見方だろう。
これは“本番”である中谷潤人戦へ向けての、いわば壮大な前哨戦。
ピカソが無敗の若手であることはリスペクトするが、今のモンスターの相手ではない。
当の井上本人もXで「自販機のコンポタを見ると季節を感じ過ぎてしまう」と投稿するほどの余裕を見せている。
このリラックスした姿こそが、絶対的な自信の表れだ。
年間MVP論争と、中谷潤人が固めた“外堀”
So happy to have lunch with our great champion Junto Nakatani who is participating in the December 27 Japan vs Mexico card in Riyadh @WBCBoxing pic.twitter.com/68KcsPWOC3
— Mauricio Sulaiman (@wbcmoro) October 23, 2025
このピカソ戦の勝利を前提に、早くも海外では「年間最優秀選手(MVP)」論争が起きている。
今年の最有力候補は、カネロを完封したテレンス・クロフォードだ。
あの勝利は確かに年間最大級のインパクトだった。
しかし、待ってほしい。クロフォードは今年、その1試合だけだ。
対する井上は、12月のピカソ戦に勝てば年間4連勝となる。
この圧倒的な“活動量”は、往年の名王者たちを彷彿とさせる。
質・量ともにボクシング界を牽引した井上がMVPに相応しい、そう考えるファンは少なくないはずだ。
その井上を待つ男、中谷潤人も着々と“外堀”を固めている。
WBCが最新ランキングで中谷をスーパーバンタム級1位に据えたことで、彼は主要4団体すべてでトップコンテンダーとなった。
これで来春の対決を阻むものは何もない。
悪童ネリが「中谷の方が強いと思ってる」とリップサービスを交えながら秋波を送るのも、中谷の実力が世界的に認められている証拠だ。
“モンスター”と“求道者”――頂上決戦の深層
この頂上決戦が我々の心を掴んで離さないのは、単なる無敗対決ではないからだ。
最近公開された中谷のインタビューは、彼の人間性を深く掘り下げている。
中学時代の沖縄への修学旅行で「命こそ宝」という言葉に出会い、ボクシングができることへの感謝を胸に刻んだという。
彼の強さは、技術や才能だけでなく、この深い感謝と哲学に裏打ちされている。
片や、比類なき才能とパワーで全てを破壊する“モンスター”井上尚弥。片や、感謝を胸に己の道を突き進む“求道者”中谷潤人。
これほど対照的で、これほど魅力的な日本人対決が、かつてあっただろうか。
12月、井上が世界にその強さを改めて示し、中谷もまた己の力を証明する。
そして2026年5月、我々ファンは歴史の目撃者となる。今はただ、その日を静かに待つとしよう。





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