2025年7月23日、クマによる被害や出没に関する報道が相次ぎました。特に北海道福島町でのヒグマ駆除に対する「クマを殺すな」という抗議電話が問題視されており、地域住民の切実な声と、クマとの共生を巡る課題が浮き彫りになっています。
北海道福島町でのヒグマ駆除と住民の憤り
7月12日に新聞配達員の男性がヒグマに襲われ死亡した北海道福島町で、7月18日未明に一頭のヒグマが駆除されました。
このヒグマはDNA鑑定の結果、亡くなった男性を襲った個体と一致し、さらに4年前(2021年)に同町で高齢女性を殺傷した個体とも同一であることが判明しました。
この駆除に対し、福島町役場には「クマを殺すな」「クマの土地に人間が住んでるんだろう」といった抗議の電話が多数寄せられているといいます。
電話の多くは町外、さらには道外からのもので、役場職員は「“お前も死ね”というような過激な言葉もあり、つらい」と語っています。
これに対し、北海道民からはSNS上で怒りの声が上がっています。
特に「4年前に殺されたおばあさん、上半身が見つかってないんだぞ!」という切実な投稿があり、被害者や遺族の無念を理解せずに行われる抗議への憤りが示されています。
クマは獲物を生きたまま食べることがあり、その残虐性や、人里で被害に遭う住民の恐怖は、現場を知らない人には想像しにくい現実です。
投稿者は、クマをかわいそうだと感じる気持ちは理解できるとしつつも、住宅街での新聞配達中や自宅の畑での作業中に襲われた被害者を挙げ、「人間社会で殺人を犯せば刑務所行きで、最悪死刑です。
でも人を殺めたクマは野放しですか?」「抗議した人が捕獲したクマを自費で輸送して自宅で飼育してくれますか?」と、責任を負えない抗議への疑問を投げかけています。
クマの習性と危険性
専門家や経験者の証言によると、クマは獲物や場所に強い執着を持つため、同じ場所に何度も現れる傾向があります。
また、人間を襲った経験を持つクマは、人間を「襲いやすく毛のない柔らかい獲物」と認識し、執拗に襲いかかるため、駆除が必要とされています。
過去には、1915年に北海道で起きた「三毛別ヒグマ事件」のように、凄惨なクマ被害の事例が多数存在します。
このような事例を知れば、一方的な駆除反対の抗議はできないはずだと、危機感を募らせています。
また、「熊外傷」と呼ばれるクマによる怪我は、形成外科医が「顔面外傷の中でも最悪の類」と述べるほど深刻です。
クマは人間の頭部や顔面を執拗に攻撃するため、骨や皮膚、神経が激しく損傷し、失明に至るケースも少なくありません。
たとえ命が助かっても、以前と同じ社会生活を送ることは極めて困難であるといいます。
各地でのクマ出没情報
- 兵庫県川西市一庫3丁目: 7月23日午後1時30分ごろ、クマが目撃されました。
クマ被害の増加と対策の課題
環境省によると、2023年度のクマによる人身被害は過去最多の219人に上りました。
これは餌となるブナ科の堅果類が「大凶作」だった東北地方で被害が急増したことが要因とされています。
地球温暖化により、堅果類の豊凶のサイクルが短くなっているとの指摘もあり、今年は再び大凶作の恐れがあり、警戒が必要です。
これまで市街地や住宅地でのクマ対策は、人に危険が迫ってから警察官職務執行法に基づいて警官が発砲を命じる仕組みでしたが、建物内にクマがとどまった場合には対応できない課題がありました。
このため、政府は鳥獣保護管理法を改正し、9月からの施行を前に環境省がガイドラインを公表しました。
これにより、一定の条件を満たせば自治体の判断で市街地での緊急銃猟が可能となります。
しかし、クマの出没が相次いだ場合、ハンターの確保が課題となります。
また、農林水産省はICT(情報通信技術)の導入を支援し、センサーカメラなどでクマの生息域や種類を把握し、効果的にわなを設置して捕獲する取り組みを進めていますが、地方自治体でのデジタル機器の導入は3分の1にとどまっています。
自治体の予算不足やデジタルに詳しい人材の不足がその背景にあり、財政支援の拡充や人材育成、情報提供の強化が求められています。
過疎高齢化が進む地域では、クマだけでなくイノシシやシカなどの市街地への出没も増加しており、人命や農作物への被害拡大が懸念されています。
自治体や関係機関との連携を強化し、生活圏にクマを寄せ付けないための総合的な対策が急務となっています。
クマ問題が単なる野生動物との遭遇ではなく、社会全体で向き合うべき複雑な課題であることを示しています。



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