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【史上最悪の音楽】The Shaggs(ザ・シャッグス)の珍盤|Philosophy of the Worldの伝説

ザ・シャッグスのアルバム『Philosophy of the World』のジャケット写真と音楽記号。

the shaggs philosophy of the world songsについて検索しているあなたは、おそらく音楽史上で最も奇妙で、最も賛否両論を巻き起こしたアルバムの一つに興味をお持ちのことでしょう。

「史上最悪のレコード」と酷評される一方で、一部の批評家やミュージシャンからは「偶然の天才」と絶賛されるこの作品群には、多くの謎と魅力が詰まっています。

この記事では、カート・コバーンはシャッグスが好きでしたか?という有名な疑問から、代表曲であるMy Pal Foot Footという歌の意味は何ですか?といった具体的な楽曲の背景まで、深く掘り下げていきます。

そもそもシャッグスの父親は誰ですか?というバンドの特異な結成秘話、一度聴いたら忘れられない独特な歌詞の世界観、そして音楽メディアのピッチフォークがなぜ高評価を与えたのかも解説します。

さらに、未発表音源を集めたオウン・シングの存在、the shaggs 再結成の経緯、物語の映画化に関する噂、そして日本のネットカルチャーであるシャッグス なんjでの語られ方や、ファンアイテムのtシャツ、謎のキーワードであるシャッグス・リムに至るまで、シャッグスを取り巻くあらゆる情報を網羅的に解き明かし、その伝説の核心に迫ります。

この記事でわかること

✔︎ The Shaggsというバンドがどのようにして生まれたのか
✔︎ アルバム『Philosophy of the World』がなぜ賛否両論を呼ぶのか
✔︎ カート・コバーンをはじめとする後世のミュージシャンへの影響
✔︎ バンド解散後の再評価や再結成、メディア展開の歴史

目次

1. The Shaggsの「Philosophy of the World」とは

✔︎ シャッグスの父親は誰ですか?
✔︎ 「My Pal Foot Foot」という歌の意味は何ですか?
✔︎ 評価を二分するアルバムの歌詞
✔︎ ピッチフォークでの意外な高評価
✔︎ 史上最悪の曲50選という評価も

1-1. シャッグスの父親は誰ですか?

The Shaggsというバンドの誕生、音楽性、そしてその運命のすべてを語る上で、彼女たちの父親であるオースティン・ウィギン・ジュニアの存在は絶対に欠かすことができません。

彼は単なるバンドの結成者やマネージャーという言葉では到底収まらない、まさにバンドの創造主であり、厳格な指導者、そしてある種の支配者でもありました。

彼の常人離れした強い意志と信念がなければ、シャッグスという音楽史上の奇跡(あるいは事件)が世に出ることは万に一つもなかったでしょう。

すべての物語は、オースティンの母親、つまりシャッグスのメンバーであるウィギン姉妹の祖母が、若き日のオースティンの手相を見て伝えた3つの予言から始まります。

その予言とは、「①ストロベリーブロンドの髪の女性と結婚する」「②母親の死後に2人の息子を授かる」「③娘たちが世界的な人気バンドを結成する」というものでした。

祖母の3つの予言

オースティンは、長じて最初の2つの予言が現実のものとなったことで、3つ目の予言も必ず実現するという妄信に近い確信を抱くようになりました。

この揺るぎない信念が、彼を娘たちにバンドを結成させるという、傍から見れば常軌を逸した行動へと駆り立てたのです。

それは娘たちの才能や意志を問うものではなく、予言を成就させるための、彼自身の使命でした。

こうしてオースティンは、音楽に全く興味を示さなかった娘たち(ドロシー、ベティ、ヘレン)を半ば強制的に学校から退学させ、外部との交流を制限しました。

そして楽器を買い与え、毎日、食事や睡眠以外のほとんどの時間を練習に費やすという、軍隊のようなスケジュールを課したのです。

姉妹は父親を内心「変人」だと思いながらも、彼の頑固で気まぐれな性格に逆らうことはできませんでした。

言ってしまえば、シャッグスの音楽活動は、姉妹たちの内なる表現欲求からではなく、父親の確信と執念によってゼロから作り上げられたものなのです。

この父親の独善的な情熱は、1969年のレコーディング時にも遺憾なく発揮されます。

スタジオのエンジニアが「彼女たちの演奏はまだレコードにするレベルに達していない」とプロとして当然の助言をしても、オースティンは「彼女たちの勢いが本物であるうちに記録したい」と一切聞く耳を持ちませんでした。

この父親の強烈な個性が、結果として音楽の常識からかけ離れた、唯一無二のアルバムを生み出す直接的な原因となったのです。

1-2. 「My Pal Foot Foot」という歌の意味は何ですか?

「My Pal Foot Foot」は、The Shaggsの代表曲として最も頻繁に名前が挙がる楽曲であり、彼女たちの音楽性を最も端的に象徴する一曲です。

この歌のテーマは極めてシンプルで、メンバーのドットが当時飼っていたものの、どこかへ行ってしまった愛猫「フットフット」について歌ったものです。

歌詞は、いなくなったペットを純粋に心配し、無事に見つかることを心から願うという、まるで子供が書いた作文のような、飾り気のない言葉で綴られています。

しかし、この曲が多くの人々に忘れがたい衝撃を与え、音楽史にその名を刻むことになったのは、その常識外れの演奏とメロディにあります。

技術的な観点から見ると、その特徴は「破綻」と呼ぶのが最も近いかもしれません。

音楽的特徴の破綻

✔︎ リズムの崩壊:ドラムは一定のビートを刻むことを放棄したかのように自由奔放に叩かれ、ギターのリズムと同期する瞬間はほとんどありません。拍子は絶えず揺れ動き、聴き手は安定したグルーヴ感を得ることができません。
✔︎ メロディとハーモニーの不一致:ボーカルとギターが奏でるメロディラインは、一般的な音階やコード進行から逸脱しており、常に不安定で心もとない印象を与えます。
✔︎ 不協和音の連続:ギターのチューニングが意図的か偶然か、標準的な調律から大きく外れているため、楽曲全体を通して独特の不協和音が鳴り響き、聴き手に強烈な違和感を与えます。

これらの要素が渾然一体となることで、多くの人が初めて聴いた際に「ひどい演奏」「音楽になっていない」と感じてしまうような、前代未聞のサウンドが生まれています。

ただ、この技術的な未熟さや破綻こそが、逆説的に歌詞の持つ無垢な純粋さや切実さを何倍にも増幅させていると評価する声も少なくないのです。

もし熟練のミュージシャンがこの曲を完璧なテクニックで演奏したとしたら、それは単なる「猫を探す歌」で終わってしまったかもしれません。

しかし、シャッグスの演奏には、技術を超えた本物の感情の揺らぎが記録されています。

この「ありのままの姿」こそが、この曲が単なる珍曲ではなく、アウトサイダー・アートとしてカルト的な人気を博している最大の理由と言えるでしょう。

このように、「My Pal Foot Foot」は単なるペットへの愛情を歌った曲ではなく、シャッグスの音楽が内包する「偶然の芸術性」や「アンチ・テクニック」の美学を鮮やかに体現した、音楽史における非常に重要な一曲なのです。

1-3. 評価を二分するアルバムの歌詞

シャッグスのアルバム『Philosophy of the World』が、単なる「下手なバンドのレコード」で終わらず、後世まで語り継がれるカルト的な魅力を放ち続けている源泉は、その衝撃的な演奏だけでなく、極めて純粋で素朴、そして時に難解な歌詞にもあります。

作詞作曲は主にリードギターとボーカルを担当したドロシー・ウィギンが一手に担っており、そのインスピレーションは、外部の世界から隔離された彼女たちの閉鎖的な日常生活や、子供のような素朴な疑問から生まれていました。

歌詞のテーマは、前述の愛猫フットフットや、スポーツカー、両親への想い、ハロウィーンといった、非常に身近で普遍的なものが中心です。

例えば、アルバムのタイトル曲でもある「Philosophy of the World」では、「どこに行くかは問題じゃない/誰に会うかは問題じゃない/いつも反対する人はいる/私たちは最善を尽くすだけ」と、達観したような哲学を拙い言葉で歌い上げます。

また、「Who Are Parents?(親とは誰か?)」では、「親とは、いつもそこにいてくれる人/彼らはあなたのことを心から心配してくれる人」と、子供の視点から見た親への絶対的な信頼と愛情をストレートに歌っています。

しかし、そのあまりにも無垢で汚れのない言葉選びが、あの予測不可能な不協和音と混ざり合うことで、聴く人によっては一種のサイコパス的な不気味さや、抑圧された環境下で育った者の歪んだ心理を読み取ってしまうこともあります。

これは、彼女たちが父親の厳格な管理下で思春期を過ごし、同年代の若者が経験するような社会的な交流をほとんど絶たれていたという、特殊な生育環境が影響しているのではないか、と指摘する声も少なくありません。

抑圧の表れか、純粋さの結晶か

彼女たちの歌詞が、厳格な父親の反感を買わないように、無意識のうちに自己検閲した結果生まれたものなのか、それとも本当に外部の影響を受けていない彼女たちの純粋な心から自然に生まれたものなのかは、今となっては誰にも断定できません。

ただ、この汚れのない児童文学の一節のような歌詞が、あの混沌としたサウンドに乗って淡々と歌われることで、聴き手に強烈な違和感と、一度聴いたら忘れられないほどのインパクトを与えているのは紛れもない事実です。

ドロシー本人は後年のインタビューで、歌詞への父親の直接的な影響を否定し、「両親を敬わない同世代の子供たちへのメッセージだった」と語っています。

いずれにしても、シャッグスの歌詞は、彼女たちの音楽が「アウトサイダー・ミュージック」の金字塔として評価される上で、その特異な演奏と同じくらい根源的で重要な要素となっているのです。

アルバム『Philosophy of the World』トラックリスト

サイド曲順タイトル長さ
A面1Philosophy of the World2:56
2That Little Sports Car2:06
3Who Are Parents?2:58
4My Pal Foot Foot2:31
5My Companion2:04
6I'm So Happy When You're Near2:12
B面1Things I Wonder2:12
2Sweet Thing2:57
3It's Halloween2:22
4Why Do I Feel?3:57
5What Should I Do?2:18
6We Have a Savior3:06

1-4. ピッチフォークでの意外な高評価

シャッグスの『Philosophy of the World』は、「史上最悪」というインパクトの強い評価が先行しがちですが、現代において最も権威ある音楽レビューサイトの一つであるPitchfork(ピッチフォーク)では、10点満点中8.6点という驚くべき高評価を獲得しています。

これは並大抵の評価ではなく、歴史的な名盤と同等か、それ以上のスコアです。

このレビューは2016年にLight in the Attic Recordsから高品質なリマスター盤が再発された際に公開されたもので、多くの音楽ファンを驚かせると同時に、シャッグスに対する現代的な評価を決定づけるものとなりました。

Pitchforkのレビューで執筆者のQuinn Morelandは、このアルバムを単なる「下手な演奏」として一笑に付すのではなく、その音楽が持つ唯一無二の独創性と、音楽史における特異な芸術的価値を深く分析しました。

Pitchforkが高く評価したポイント

✔︎ 純粋な表現(Purity of Expression):彼女たちの音楽には、音楽理論や商業的な成功への配慮、あるいは他者からの評価といった雑音が一切混じっていない。頭の中に鳴っている音を、技術的な制約を無視してそのまま音にしたかのような、恐ろしいほどの純粋さがある。
✔︎ 偶然の芸術(Accidental Art):意図せずして生まれた変拍子、不協和音、そして奇妙な楽曲構成が、結果としてフリー・ジャズの巨匠オーネット・コールマンや、前衛音楽家キャプテン・ビーフハートの実験にも通じる、極めてアヴァンギャルドなサウンドを生み出している点。
✔︎ 感情の生々しさ(Raw Emotion):技術的な洗練が一切ないからこそ、彼女たちが抱える喜び、悲しみ、不安といった感情が、フィルターを通さずにダイレクトに伝わってくる。その生々しさは、完璧に作り込まれた商業音楽では決して到達できない領域にある。

ピッチフォークは、シャッグスを「アウトサイダー・ミュージックのゴッドマザー」と最大級の賛辞で評し、彼女たちの音楽が既存の音楽のルールブックを、意図せずして完全に無視し、新しいルールを創造してしまった点を高く評価しました。

つまり、彼女たちは「間違った」音楽を演奏していたのではなく、誰にも真似できない「自分たちだけの」音楽を、奇跡的に創造していたと結論付けたのです。

この影響力のあるメディアによる詳細な批評は、シャッグスに対するアカデミックな視点を提供し、単なる「ヘタウマ」や「カルトバンド」というサブカルチャーの枠を超え、20世紀が生んだ真に独創的な芸術作品として再評価される大きな流れを加速させました。

1-5. 史上最悪の曲50選という評価も

✔︎ カート・コバーンはシャッグスが好きでしたか?
✔︎ 未発表音源盤シャッグス・オウン・シング
✔︎ シャッグス 再結成とその後
✔︎ 物語はついに映画化されたのか
✔︎ シャッグス なんjでのカルト的人気
✔︎ シャッグスのファンであることを示すアイコンとしてのTシャツ

2-1. カート・コバーンはシャッグスが好きでしたか?

はい、その問いに対する答えは明確にイエスです。

90年代の音楽シーンを根底から覆したNirvana(ニルヴァーナ)のフロントマン、カート・コバーンは、シャッグスの熱心なファンであり、その音楽の信奉者であったことが広く知られています。

彼が生前に公表した自身の個人的なフェイバリット・アルバム50枚のリストの中で、『Philosophy of the World』は、The VaselinesやThe Stoogesといった彼の音楽的ルーツとなったバンドと並んで、堂々の第5位にランクインしています。(出典:Far Out Magazine "Kurt Cobain's 50 favourite albums of all time"

グランジ・ロックという一大ムーブメントを牽引し、望まない成功と名声に苦しみながらも、常にメインストリームの音楽業界が持つ欺瞞性に反発し続けたカート・コバーン。

彼にとって、商業主義とは完全な対極に位置するシャッグスの音楽は、非常に特別な輝きを放って見えたと考えられます。

彼がシャッグスに強く惹かれた理由は、主に以下のような、彼自身の音楽哲学と深く共鳴する点にあったと推測されます。

『Philosophy of the World』がシャッグス唯一のスタジオアルバムとしてあまりにも有名ですが、実は彼女たちの不可思議な音楽キャリアを補完し、その実像を多角的に理解する上で欠かせない重要な作品として、コンピレーション・アルバム『Shaggs' Own Thing』が存在します。

このアルバムは、シャッグス再評価の口火を切ったレーベル、ラウンダー・レコードによって1982年にリリースされました。

1980年に『Philosophy of the World』を再発し、世に衝撃を与えた同レーベルの主宰者テリー・アダムスとトム・アルドリーノが、ウィギン姉妹にさらなる音源の存在を問い質し、提供を受けた1969年から1975年にかけての未発表音源を丹念に編集したものがこの作品なのです。

『Shaggs' Own Thing』には、デビューアルバム制作時のスタジオ・アウトテイクや、彼女たちの主な活動の場であったニューハンプシャー州フリーモントのタウンホールでのライブ音源などが収録されており、『Philosophy of the World』のあの密室的で緊張感に満ちた世界とはまた少し違った、よりリラックスした(それでも十分に奇妙な)シャッグスの姿を垣間見ることができます。

『Shaggs' Own Thing』の音楽的特徴

最も興味深いのは、いくつかの楽曲で『Philosophy of the World』時代と比較して、演奏がいくらか整理され、上達しているように聴こえる点です。

これは彼女たちが、決して音楽を放棄していたわけではなく、自分たちなりに活動を継続していた証左と言えます。

また、カーペンターズの「Yesterday Once More」や、当時ラジオで流れていたであろうポップソングのカバーも収録されており、父親の選曲センスと、それを懸命に演奏しようとする姉妹の健気な姿が目に浮かぶようです。

もちろん、そのカバー演奏も原曲の持つ情緒を完全に無視した、シャッグスならではの独特で純粋な味わいに満ちています。

このアルバムの存在は、シャッグスが単なる「一発屋」の奇妙なバンドなのではなく、父親の管理下で数年間にわたって地道に音楽活動を続けていた、生身のローカル・バンドであったという事実を何よりも雄弁に物語っています。

オリジナルアルバムの混沌とした芸術的な魅力とは別に、バンドとしてのささやかな成長(あるいはその停滞)の軌跡を知る上で、『Shaggs' Own Thing』は熱心なファンにとって欠かせない、愛すべき一枚と言えるでしょう。

2-3. The Shaggs 再結成とその後

1975年、バンドの絶対的な支柱であり、良くも悪くもすべての原動力であった父オースティンの突然の死をきっかけに、シャッグスはまるでその役目を終えたかのように静かに解散しました。

姉妹は楽器を売り、音楽の世界から完全に足を洗い、それぞれが結婚して家庭を持ち、工場や清掃の仕事に就くなど、ごく普通の慎ましい生活を送っていました。

彼女たちの奇妙な物語は、そこで完全に幕を閉じたかに見えました。

しかし、歴史は彼女たちを放っておきませんでした。

1980年のアルバム再発以降、口コミでじわじわと、しかし確実にカルト的な人気が高まり続ける中、ついに伝説が現実のものとなる再結成の時が訪れます。

その最も象徴的で感動的な舞台となったのが、アメリカの人気オルタナティブ・ロックバンド「Wilco」が主催し、2017年にマサチューセッツ州で開催された「ソリッド・サウンド・フェスティバル」でのライブです。

これは、実に40年以上ぶりとなる、本格的なフルセットでの歴史的なパフォーマンスとなりました。

再結成時のメンバーと演奏形式

残念ながら、オリジナルのドラマーであり、その独特のリズム感でバンドの心臓部を担っていたヘレン・ウィギンは2006年に心臓発作で亡くなっていたため、この再結成ライブには参加していません。

ステージに立ったのは、存命のメンバーであるドロシー(ドット)とベティの姉妹二人でした。彼女たちはもう楽器を演奏することはなく、ボーカルに専念しました。

そして、彼女たちを敬愛する若い世代のミュージシャンたちがバックバンドを務め、オリジナルのレコードに記録されたあの拙く、不規則な演奏を、音符一つ一つに至るまで驚異的な精度で忠実に再現するという、前代未聞の形式でのパフォーマンスでした。

この再結成ライブは、長年のファンにとっては夢のような出来事であり、多くの音楽メディアにとっても大きなニュースとなりました。

『The New Yorker』誌などがその奇跡的な一夜を詳細にレポートするなど、彼女たちの歴史的なステージは大きな注目と感動を呼びました。

また、この大規模な再結成以前にも、バンドのリーダーであったドットは、ブルックリンのミュージシャンたちのサポートを受け「Dot Wiggin Band」としてソロ活動を再開し、2013年にはアルバムをリリースするなど、音楽への情熱を静かに、しかし確かに再び燃やしていました。

このように、一度は音楽シーンから完全に姿を消したシャッグスですが、後世の予期せぬ再評価という大きな波に乗り、生ける伝説として再びファンの前に姿を現したのです。

2-4. 物語はついに映画化されたのか

シャッグスの物語は、予言に導かれた父親の執念、外部から隔離された姉妹の生活、そして意図せずして生まれてしまった音楽史上の特異点という、あまりにもドラマチックな要素に満ちています。

そのため、彼女たちの数奇な運命は、まるで映画の脚本のようだと評され、以前から映像化の企画が何度も持ち上がってきました。

その中でも最も大きな動きとしては、著名なジャーナリストであり作家のスーザン・オーリアンが1999年に権威ある雑誌『The New Yorker』に寄稿した、シャッグスに関する詳細なノンフィクション・エッセイ「Meet the Shaggs」が決定的なきっかけとなりました。

この記事は多方面から絶賛され、アメリカの文芸界にシャッグスの物語を知らしめ、すぐにハリウッドによって映画化の権利が買い取られました。

一時は、制作会社としてトム・ハンクスのプレイトーンが関わり、女優のエル・ファニングがメンバーの一人を演じるという具体的な噂も流れ、企画は順調に進行していると見られていました。

映画化の現状:難航する企画

しかし、2024年現在に至るまで、残念ながらシャッグスの伝記映画はまだ完成・公開には至っていません。

企画は長年にわたって開発段階に留まり続けており、監督やキャストの変更、資金調達の問題など、様々な障壁があったと推測されます。

このような状態はハリウッドでは「開発地獄(Development Hell)」と呼ばれ、多くの有望な企画が陽の目を見ることなく消えていくことも少なくありません。

一方で、映像化とは少し形が異なりますが、彼女たちの物語は別の形で見事に舞台化されています。

2011年には、ニューヨークのオフ・ブロードウェイでミュージカル『Philosophy of the World』が上演され、批評家から高い評価を受けました。

この作品は、彼女たちの結成秘話や父権的な家庭環境、そして音楽が持つ不思議な力を、ユーモアとペーソスを交えて描き出し、多くの観客の心を打ちました。

このように、大規模な長編映画化の実現にはまだ至っていないものの、シャッグスの唯一無二の物語は、多くのクリエイターに尽きることのないインスピレーションを与え続けています。

いつの日か彼女たちの数奇な運命がスクリーン上で鮮やかに描かれる可能性は、今も決して消えてはいないと言えるでしょう。

2-5. シャッグス なんjでのカルト的人気

シャッグスが放つ奇妙で抗いがたい魅力は、60年代のアメリカから遠く離れた、現代日本のインターネット・カルチャーの深層部にまで浸透しています。

特に、日本最大級の匿名掲示板群「5ちゃんねる」の中でも、特にユニークな文化を持つ「なんでも実況J(ジュピター)板」、通称「なんj」では、シャッグスは一種のカルト的なアイコンとして、特異な人気を誇る存在として定期的に語られています。

なんjのユーザー(通称:なんJ民)たちは、プロ野球の実況を起点としながらも、音楽、映画、歴史、ガジェットなど、あらゆるジャンルにおいて極めてマニアックで膨大な知識を持つことで知られています。

その独特なコミュニティの中で、シャッグスは以下のような、愛情と揶揄が入り混じった複雑な文脈で話題に上ることが多いのです。

なんjで語られるシャッグス像

✔︎ 「史上最悪のバンド」という共通認識(ネタ):その常軌を逸した演奏を面白がり、「これを平然と聴ける俺は本物の音楽通」といった形で、自らのマニア度をアピールするためのベンチマーク的な存在として扱われる。
✔︎ 「一周回って天才」「現代アート」という再評価:単なる技術的に下手なバンドとして切り捨てるのではなく、その音楽が持つ偶発的な芸術性や前衛性を評価し、「凡人には理解できない高尚なアート」として神格化する動き。
✔︎ 父親(オースティン)の強烈なキャラクター性:「予言を信じて娘にバンドを強制したヤバい親」という、物語性の強いバックグラウンドが格好の話題として取り上げられ、キャラクターとして消費される。

このように、シャッグスはなんjにおいて、純粋な音楽批評の対象としてだけでなく、その特異なバックグラウンドストーリー全体が「面白いコンテンツ」として愛され、消費されているという側面が強くあります。

もちろん、これはシャッグスに限った現象ではなく、多くのカルト的な人気を持つアーティストや作品に見られるネット時代特有の受容の形です。

しかし、日本の特定のネットコミュニティにおいて、半世紀以上も前のアメリカの無名な姉妹バンドが、これほどまでに生き生きと語られ続けているという事実は、シャッグスの物語が持つ普遍的なインパクトと、時代や国境を超える魅力の強さを何よりも雄弁に証明していると言えるでしょう。

2-6. シャッグスのファンであることを示すアイコンとしてのTシャツ

あの、なんとも言えない表情でこちらを見つめる三姉妹が写った、印象的なアルバム『Philosophy of the World』のジャケット写真をそのままプリントしたTシャツは、公式・非公式を問わず、長年にわたって数多く製作・販売されています。

音楽フェスティバルやレコードストアなどでこのTシャツを着ている人を見かけたら、その人物は間違いなく熱心なシャッグスファンか、あるいは相当ひねくれたセンスを持つ音楽通である可能性が高いでしょう。

このTシャツは、「自分はこの音楽の価値がわかる人間である」ということを示す、知る人ぞ知るバンドのファン同士の「合言葉」や「踏み絵」のようなアイコンとして機能しているのです。

2-7. 総括:The Shaggs 「Philosophy of the World 」

✔︎ The Shaggsは1960年代に米国ニューハンプシャー州で結成されたウィギン三姉妹によるバンド
✔︎ 音楽に関心がなかったが父親オースティン・ウィギンの強い意志により強制的に結成させられた
✔︎ 父は祖母の「娘たちが人気バンドになる」という手相占いの予言を固く信じていた
✔︎ 1969年に唯一のスタジオアルバム『Philosophy of the World』を自主制作でリリース
✔︎ アルバムはチューニングの狂ったギターや不規則で不安定なリズムが際立つ
✔︎ その歌詞は子供のように純粋で素朴なテーマを歌っている
✔︎ リリース当時は全く注目されずプレスされた1000枚のうち900枚は廃棄されたとされる
✔︎ 1975年にバンドの原動力であった父親の死去に伴い活動を終了し解散した
✔︎ 1980年代にラウンダー・レコードからの再発をきっかけに再評価の機運が高まった
✔︎ フランク・ザッパやカート・コバーンといった影響力のあるミュージシャンが高く評価したことで知名度が向上
✔︎ カート・コバーンは本作をお気に入りアルバム全50枚の中の第5位に挙げている
✔︎ 「史上最悪のアルバム」と酷評される一方で「偶然の天才が生んだ芸術」と絶賛もされる
✔︎ 権威ある音楽メディアPitchforkでは10点満点中8.6という極めて高いスコアを獲得
✔︎ 未発表音源やライブ音源をまとめた『Shaggs' Own Thing』も後にリリースされた
✔︎ 2017年にはWilco主催のフェスで40年以上ぶりに再結成ライブを行い大きな話題となった
✔︎ その特異な物語はミュージカル化もされ、長編映画化の企画も進行中である

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